普段穏やかな人が怒るのは、ドラマ中の演技だと分かっていても怖いもの。怒る理由が相手を思いやることであればなおさら、演技に込められた気持ちに圧倒されるものだ。
大企業の受付を舞台とするドラマ「受付のジョー」(日本テレビ系)の第5話が5月23日に放送。受付嬢の花房カレン役を務めるトリンドル玲奈の演技が光っていたという。
カレンは西原亜希が演じる沙知山瞳チーフの考えを理解しながら、受付を一緒に守り続けてきた。愛想の良さで社外の人からも愛されており、後輩の面倒見も良い彼女。いつも温厚で柔らかい笑顔を見せ、感情の波も少ないのだが、今回は沙知山チーフが結婚を機に受付業務を辞めることを知り、感情を爆発させたのである。
今回注目だったシーンは3つ。1つめは、カレンに伝言したい沙知山チーフが受付業務中に彼女の顔をちらちら見るものの、いつもの愛想のよい笑顔は消えうせ、しまいには「言いたいことはご自分で直接伝えたらどうですか?」と冷たく突き放されたシーンだ。
2つめは、公園でランチしているカレンの元に沙知山チーフがやってきたとき。同じベンチに座っているのにもかかわらず距離をとっている様子からは、カレンが沙知山チーフの隠し事を許せない気持ちが伝わってきた。沙知山は「最後まで迷惑かけちゃう」と申し訳ない気持ちを言葉にするが、カレンは「辞めるの謝ってほしいなんて思ってません!」と、その場を去っていったのだった。
「沙知山を信頼しているカレンは、大事なことになると教えてくれないと不満に感じている様子。一方で沙知山には4年前、受付の改革に挑むも失敗した過去があり、自分の考え方を押し付けすぎたことが原因だと分析していました。それがトラウマとなり、大事なことや本当に伝えたいことを口にすることに抵抗を感じているようです」(テレビ誌ライター)
そして3つめは、沙知山とカレンが口論になるシーンだ。沙知山は退職前、受付チームの雇用を守るよう社内に掛け合っていたが、それを知ったカレンは「そんなこと頼んだ覚えありません。」と強い口調で物申していた。沙知山は思わず「ごめん」と謝るが、カレンは「だから謝ってほしいなんて思ってません!」と食い気味に反論したのである。
「このシーンでのトリンドルは、声が裏返るほどの熱演でした。穏やかさが際立っていたカレンが感情的になる姿は視聴者としても驚きでしたし、怖さを感じさせる表情も新鮮でトリンドルの演技力に圧倒されました。そのおかげで受付や沙知山のことをいかにカレンが大事に思っているのかが、視聴者にもビビッドに伝わったに違いありません」(前出・テレビ誌ライター)
物語の終盤、沙知山はカレンにチーフを引き継ごうとするが、カレンは「私じゃ瞳さんみたいにできない」と涙する。その涙に沙知山は「大丈夫」と励ましの言葉をかけていた。
「このシーンでやっとカレンが笑顔を見せることに。沙知山からの言葉で現状を受け入れ、チーフとして仕事を引き継ぐ覚悟が表れた場面でした。そんなカレンをトリンドルは、一話を通して気持ちの振れ幅に緩急をつけながら演じていたわけで、だからこそ視聴者も感情を揺さぶられたことでしょう」(前出・テレビ誌ライター)
本作は、受付業務を廃止しようとている会社の受付に焦点を当てた物語。受付のデジタル化が進められるなか、沙知山とともに築いてきた受付業務を大切に思っているカレンには、視聴者もぜひ受付を守ってほしいとの願いを託しているのではないだろうか。
(村松美紀)