「ナイト・ドクター」オリジナルナンバーで話題のアーティスト・琴音、「初めて作った曲に母が泣いてくれました」

 9月22日にミニアルバム「君は生きてますか」をリリースするシンガーソングライターの琴音。同アルバムには7月期の月9ドラマ「ナイト・ドクター」(フジテレビ系)のオリジナルナンバーでもあるリード曲「君は生きてますか」を含め、全6曲が収録されている。

 視聴率も好調な「ナイト・ドクター」とともに同曲も視聴者のあいだで評判となり、YouTubeの琴音チャンネルで公開されたMVは60万回再生を突破。歌詞付きの「Lyric Video」は100万回再生を超えており、アーティストとしての彼女自身も注目度を高めているようだ。

 asageiMUSEでは、同曲やアーティストとしての日常などについて訊いた前回に引き続き、今回は故郷の長岡を拠点に学生シンガーとして活動していた彼女をクローズアップ。音楽を始めたきっかけや背景について訊ねつつ、弱冠19歳の新進アーティストである琴音のパーソナリティを掘り下げてみた。

9月22日発売のミニアルバム「君は生きてますか」

――アーティスト活動を始めたキッカケについて教えてください。

琴音 父がもともとギターを弾きながら歌っているアマチュアミュージシャンで、車では父の好きなMr.Childrenさんの曲がいつも流れていました。そのなかにギターのイントロがカッコいい「Simple」という曲があって、それを弾けるようになりたいと思い小四くらいの時にギターを始めたのが最初のキッカケです。

――家にはもともとギターがあったわけですね。

琴音 ギターのほかにもコードブックや、コード譜が載った音楽雑誌とかがたくさんありました。あと母がビアノを弾くので、伴奏してもらいセッションしながら私が歌ったり、自分でギターを手に弾き語りをすることが多かったです。

――小学生だとコードを押さえるのもなかなか大変そう。

琴音 自分はもともと手が小さく、当時は握力もなかったので、Fもそうですし、CとかGとか簡単なコードでも弦が鳴らないので大変でした。最初のうちは指が痛くて痛くて、シャンプーをするだけでも左手の指先が痛くて、右手だけでシャンプーしたりしていました。でも、ずっと練習していたら少しずつ上手くなっていくじゃないですか。それを実感できるのはすごくうれしかったです。

――作曲はギターを使って?

琴音 はい、ギターでしています。ピアノは「かえるの合唱」くらいしか弾けませんが、適当に弾いていたらたまたま良いコードに当たってそれを曲にしてみたり、たまには母がピアノで演奏し直して「こっちのほうがいいんじゃないか」みたいなこともありました。

――ライブを始めたのはいつからですか。

琴音 人前で歌うようになったのは小学校を卒業するころです。長岡にはお洒落な方が多くて、ジャズ系の音楽をたしなむ雰囲気がありました。母もジャズが好きで、私がずっと歌手になりたい、音楽の仕事をしたいと周りに言いふらしているのを知って、知り合いの方が店長をされているお店で歌わせてもらえるようになったんです。ギターをちゃんと持って弾き語りをするようになったのは中一か中二のころでした。

――はじめからオリジナル曲だったんですか。

琴音 最初の一年くらいはカバー曲を歌っていました。曲を作りたいという気持ちはあったのですが、自分にそんな能力なんてあるのかな、やっぱり難しそうだなという想いがありましたね。でもオリジナルの曲がないと出させてもらえるイベントの幅が少ないですし、前座になることも多かったので、曲を作れるようになったほうがいいなとは思っていました。母からも「歌が上手い人はいっぱいいるんだから、曲を作って個性を出していかないといけないんじゃないか」って言われていました。

2018年11月の初ワンマンは即完売の人気だった。

――最初の曲はどうやって作ったんでしょうか。

琴音 まず父に訊いてみたら「作りたいと思う気持ちが大事だ」と言われたので、その思いを強く持ちながらギターを手にしたら思い浮かんだんです。コードを弾きながらメロディを考えるというのがたまたまできて、まずはメロディだけの歌ができて。次に「歌詞どうしよう?」ってなった時に、ずっとサポートしてくれていた母に向けた歌にしようと決めました。母は仕事で忙しかったのですが、時間を縫い合わせてジャズバーへの送り迎えや二人でのセッションなど、私を支えてくれていたんです。その母に向けて作った曲が初めての曲でした。

――お母さんの反応は?

琴音 母が晩酌している時に、ギターを持っていって歌いました。曲を聴いた母がすごく泣いていて、これ以上ないほど喜んでくれたんです。オリジナル曲って自分の分身みたいなもので、それに感動してもらえなかったら自分を理解してもらえていないことだと思ってドキドキしていたのですが、母が喜んでくれたことで自分の内面を反映したオリジナル曲を認められたという嬉しさがあったのと同時に、私の感情を外に出してもいいんだ、という自信も湧きました。

――そのオリジナル曲を人前で歌うように。

琴音 母から「ライブでも歌おう」と言われ、でもライブのお客さんは一般の方なのでどうなるかと思っていたのですが、やってみたら意外と好印象だったんです。そこからまず5~6曲作って、一年くらいかけて曲数を増やしていきました。オリジナル曲があると出演できるライブが増えて、しかも前座ではなく本編に出られるので人の目にも留まりやすくなり、お客さんもちょっとずつ増えていきました。お世話になっていた店長さんが知り合いに私のことを紹介してくださり、他のイベンターさんにも呼んでいただけるようになって、新潟市のイベントなどにも出演できるようになったんです。

――高一で「今夜、誕生!音楽チャンプ」(テレビ朝日系)に出演しました(2017年2~3月)。

琴音 高校生になってからはほぼ毎週土日にライブをやっていて、それで私のことを知ったのか番組の方からご連絡をいただいたんです。ライブハウスにも出演者募集のチラシが置かれていましたが、最初は「私、オリジナル歌っているし、カラオケ番組って…」と思いお断りするつもりでした。でも店長さんから「掴めるものは掴んでおかないと、ずっとチャンスがくるわけじゃない」と説得され、母からも同じようなことを言われたので、確かにそうだと思い出演を決意しました。

――番組の印象を教えてください。

琴音 最初は「知名度が上がってお客さんが増えるかな」と度胸試しのつもりだったんですが、会場に入ってみたらテレビで見るよりずっとまぶしくてキラキラしていて、「こんなところに私は上がるのか!?」とちょっとひるみましたね。対決する人同士は私語が禁止で、お互いに素通りする感じですごくピリピリしていて、私も緊張でガチガチになったのですが、母親と一緒だったのでリラックスさせてもらえました。出演する方はみな、寝る間も惜しんでレッスンに通っていたり、地元の人に愛されていたりとそれぞれのドラマがあり、そんな人たちと競わなくてはいけないことに悲しくなることもありましたね。

――勝ち抜くごとに知名度がどんどん上がりました。

琴音 SNSのフォロワーさんがどんどん増えていくじゃないですか。だから負けたらいなくなっちゃうんじゃないかと思ったらプレッシャーが重くなってきて、声が出づらくなったことも。それでも最終戦に進出できて、グランドチャンプをいただくことができました。

バンドをバックに歌う琴音。

――その後、「ワン!チャン!!~ビクターロック祭り2018への挑戦~」のオーディションにも参加。

琴音 当時は「今夜、誕生!音楽チャンプ」のためにライブを断って歌の練習に集中し、ギターも一カ月くらい触っていなかったんです。それで久しぶりにライブに出たら歌詞は飛ぶわコードは間違えるわで、スランプになっちゃったんです。しかもオーディション本番ではギターがハウリングを起こして余計に緊張してしまい、「どうしよう」という感じに。でもステージの目の前にビクターのワンちゃん(ニッパー)がいることに気づき、そこだけを見つめて歌ったら、なんとかやり切ることができました。

――そしてついにメジャーデビューへ。

琴音 そこからはもう怒涛と言うか、記憶もあまり定かではないくらいにあっという間に時間は過ぎていった感じです。その途中で、それまでは個人だったけどこれからは音楽業界で仕事をしていきますよという境目のライブがあったんです。その時、ずっと支えてくれた母に向けての曲を作りたいと考えていて、母への感謝で始まり最後も母への感謝で締めるというのが感情としていいなと思っていました。でも曲が全然できなくて、完成したのは本番ギリギリ。メモ用紙に歌詞を書いて、本番前に店長さんに「セットリスト変えていいですか?」とお願いして。ライブでは「私はこんな大事な日に何もしないような人間ではない」みたいなことを言って、個人活動を終えることができました。

――その曲は今でも歌っているんですか?

琴音 メジャーデビューEP「明日へ」にも収録されている「ここにいること」がその曲です。

――最後に、ライブに懸ける想いを教えてください。

琴音 ライブにはお客さんのリアクションだったり雰囲気とかがあって、制作とは全然違う面白味があります。場所によってもお客さんの雰囲気が違いますし、なるべく早くみなさんにお会いしたいです。11月からの「琴音 Live Tour 2021 -君は生きてますか-」ではファイナルが新潟公演なので、無事に地元に帰ってライブができることを願うばかりです。

【琴音 プロフィール】

2002年1月7日生まれ。新潟県長岡市出身。中学生からライブハウスで弾き語りをはじめ、高一で「ワン!チャン!!~ビクターロック祭り2018への挑戦~」グランプリ、および「今夜、誕生!音楽チャンプ」(テレビ朝日系)グランドチャンプを獲得。2019年3月6日にE.P.「明日へ」でメジャーデビュー。2020年6月、1stアルバム「キョウソウカ」をリリース。今年9月22日にミニアルバム「君は生きてますか」のリリースが決定。11月から全国ツアー「琴音 Live Tour 2021 -君は生きてますか-」の開催が予定されている。
ツイッター/インスタグラム @kotoneofficial
TikTok @kotoneofficial

【ミニアルバム「君は生きてますか」】
初回限定盤【CD+DVD】2500円(税別)
通常盤【CD】2000円(税別)

<収録内容>
■CD収録内容(初回限定盤・通常盤共通)
1.君は生きてますか
2.こたえ
3. 6等星
4.夜音
5.防人の詩
[Bonus Track]
6. 君は生きてますか -Special version-

■DVD収録内容(初回限定盤のみ)
Music Video Collection
・君は生きてますか ・防人の詩 ・ひとりひとつ ・翼をください

(取材協力:岸田莉香、鈴木真央)