【カムカムエヴリバディ】「お前とは終わりや」…るいを傷つけた錠一郎の真意とは?

 錠一郎が初めて、るいのことを「お前」呼ばわりした真意とは? その場面に視聴者もいらだちと悲しみを隠せなかったようだ。

 1月21日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第57話では、レコードデビューに向けて上京したトランぺッターの錠一郎(オダギリジョー)が謎の奇病に苦しめられることに。体調はどこも悪くないにもかかわらず、いざトランペットを吹こうとすると身体が思うように動かなくなっていたのだった。

 大金を掛けてジョーを売り出そうとしていた大手音楽事務所ササプロの社長は「重圧に耐えられなくなって逃げてるだけじゃないのかな?」と、仮病を怪しむことに。その疑いを晴らすべく何人もの医者に罹ったものの原因は分からず、最終的にデビューの話はおじゃんとなってしまっていた。

「大阪で待つ恋人のるい(深津絵里)からは何通も手紙が届いていたものの、錠一郎は返事はおろか開封すらしていなかった様子。『書けるわけない』という錠一郎に対し、ササプロ社長令嬢の奈々(佐々木希)は『あなたはそれでいいかもしれないけど、女はそれじゃ納得できないの』と、るいに対して同情的な態度を見せていました。しかし大阪では、錠一郎が奈々と交際し、父親のササプロ社長が激怒しているという誤った噂が流れていたのです」(テレビ誌ライター)

 デビューの話がなくなり、ひっそりと大阪に舞い戻ってきた錠一郎は、身を寄せているジャズ喫茶の前でばったりと、るいと出くわすことに。驚くるいが「いつ帰ってきたんですか?」と問うも、険しい顔で言葉を発しない錠一郎。すると彼の体調を気遣ってわざわざ大阪に足を運んだ奈々とも鉢合わせすることになったのである。

「奈々の姿を見ても、錠一郎が社長令嬢と一緒に出歩いているとの噂は信じないと告げるるい。しかし錠一郎は『ほんまや。奈々のことが好きになった。そやから…お前とは終わりや』と非情な言葉をぶつけたのでした。明らかに動揺したるいは踵を返し、走り去ることに。しかしその言葉が本当だと信じる視聴者はほとんどいなかったのです」(前出・テレビ誌ライター)

るいに冷たい視線を送る錠一郎。しかしその表情には明らかに迷いの色が見て取れた。ドラマ「カムカムエヴリバディ」公式ツイッター(@asadora_bk_nhk)より。

 自分とるいを繋ぐのはトランペットだという信念を抱いていた錠一郎。しかし、肝心のトランペットを吹けない状態となったことに、錠一郎自身が最も落胆していることもまた事実だったのだろう。

「それゆえ自分にはるいを愛する資格がないと思い込み、下手くそな嘘をついた錠一郎。この場面で『るい』や『サッチモちゃん』と呼びかけなかったのは、愛する人の名前を呼ぶ資格すらないと自分を責めていたからでしょう。逆に言えば、言い訳に使った社長令嬢・奈々の名前がすっと出てきたのは、奈々に心を奪われていない証拠。しかし数カ月ぶりに再会した錠一郎からいきなり別れを告げられたるいには、そんな心模様を推察する心の余裕などあるはずもなかったのです」(前出・テレビ誌ライター)

 相手の心に向き合うことなく、自分の都合だけでるいを傷つけてしまった錠一郎。それはトランペットだけが心の拠り所だった彼だからこその過ちだが、人と人による心の交流に乏しかった戦災孤児だからこその悲しい性でもあったのかもしれない。