ひなたよ、間に合ってくれ! 視聴者はそう願ってやまないことだろう。
4月5日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第109話で大展開だ。ハリウッド映画のキャスティングディレクターを務めるアニー・ヒラカワ(森山良子)が、ついに自分が雉真安子(演・上白石萌音)であることを認めたのである。
映画「サムライベースボール」のPRで来日し、大阪のラジオ番組「みんなあつまれ磯村吟です」にゲスト出演したアニー。シアトル生まれの日系2世と紹介されたアニーは初めて観た映画を訊かれ、最初は「風と共に去りぬ」と答えていた。
すると映画に詳しいパーソナリティーの磯村は、同作が公開された1939年(昭和14年)は名作ぞろいだと力説。日本では黍之丞シリーズの第二弾「棗黍之丞 仁義剣」が公開されたと説明すると、ここでアニーがしばし押し黙ってしまったのである。
「やがて口を開いたアニーは突然、日本語で『見ました』と告白。昭和14年に『後に夫になる人と 大阪の映画館でした』と明かしたのです。すると場面は、安子と後に夫となる雉真稔(松村北斗)が一緒に『棗黍之丞』を鑑賞していたシーンの回想に。そこからアニーは自分の生涯を語り始めたのでした」(テレビ誌ライター)
出征した稔が戦死したことで、娘のるい(深津絵里)を連れて雉真家を出たという安子。当時について「貧しくて苦労もしましたけれど 幸せでした」と語っていた。
しかし、自ら起こした自転車事故でるいの額に傷をつけてしまい、それをきっかけに雉真家に戻ったものの、「でも歯車は狂ったきり止まりませんでした」と悔恨。実家の和菓子屋を再建しようとしたり、雉真家に頼らずるいの傷を治そうとしていたことについて、若かった自分は自分の気持ちばかりで「幼い娘の胸の内を本当には分かっていませんでした」との想いを明かしたのだった。
「アニーの独白をラジオで聴いていたるいは思わず落涙。娘のひなた(川栄李奈)から名前だけは聞いていたアニー・ヒラカワが自分の母親であることに驚きつつ、長年探し求めていた母親にようやくたどり着いたことに、いろんな思いが浮かび上がってきたのでしょう」(前出・テレビ誌ライター)
るいがラジオを聴いているとも知らずに、「るい…るい お母さん あれから何べんも考えたんよ なんでこねえなことになってしもたんじゃろうて」と一人語りを続ける安子。その声に居ても立っても居られなくなり、コンサート前の控室で「お母さん、お母さん」と所在なく歩きまわるるい。
すると息子の桃太郎(青木柚)が「とにかく引き止めよ!」と提案。ひなたはラジオ局や条映太秦映画村など関係各所に連絡し、アニーが同日の13時40分に関空を発つ便でアメリカに帰国することを突き止めたのである。
タクシーに飛び乗り、アニーを追うひなた。果たして岡山から、遠く離れた関空に間に合うのだろうか。急ぐ彼女は今、52年前の出来事を繰り返さないようにと奔走しているのであった。
昭和26年に安子はるいを置いて、進駐軍将校と共にアメリカに渡ってしまっていた。そして今回もまた、アニーと名を変えた安子はるいを置いてアメリカに戻ろうとしていたのである。若き母親から老婦人へと時代が移り変わり、アメリカで映画関係者として成功していたアニー(安子)だが、自分にとって一番大切なはずの娘を置いていってしまうという部分は変わらぬままだったのだ。
「かつては置いて行かれるだけのるいでしたが、今のるいには彼女を支えてくれる大事な家族がいます。その家族がいま、アメリカに逃げ帰ろうとするアニー(安子)を追いかけ、なんとか引き留めようと尽力しているのです。果たして52年前と違った結果となるのか。岡山から関空に駆け付けようとしているひなたは、長い時を引き戻すことで時代を変えようとしているところではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)
そのひなたはアニー(安子)にとって実の孫。娘・るいの気持ちをないがしろにしたアニーがいまや、同じく血の繋がった孫に傷ついた気持ちを救われようとされているのかもしれない。