【ちむどんどん】暢子や良子が乗ったバス「ちむどん号」は50歳超えのGM製だった!

 その雄姿には日本中のバスマニアが釘付けになっていることだろう。

 返還前の沖縄を舞台にしているNHK連続テレビ小説の「ちむどんどん」。物語に登場する電化製品や自転車といった小道具も当時の様子を忠実に再現するなか、なんと半年もの時間をかけてカスタマイズしたというのが、左ハンドルが特徴的なバスの「ちむどん号」だ。

 このちむどん号、東京から研究旅行にやってきた大学教授の青柳史彦親子が乗っていたバスとして、第1回にさっそく登場。第10回では東京に旅立とうとするヒロインの暢子(稲垣来泉)が乗り込むも、「行くな!」と叫びながら追いかけてくるきょうだいたちに心が動き、運転手に「止めてください!」とお願いする印象的なシーンで中心的な役割を果たしていた。

 そして舞台が7年後の昭和46年(1971年)に進んだ第12回でも、長男・賢秀(竜星涼)の不祥事を謝りに行くため、高三になったヒロイン暢子(黒島結菜)が乗車。街のハンバーガー屋に向かう長女の良子(川口春奈)も利用するなど、時代を超えて重要な役割を果たしている。

「番組公式ガイドブックによると、アメリカ統治下の時代設定に合わせるため、アメリカから古いバスを購入して改造したそうです。番組公式ツイッターで配信している振り返り動画の『黒島ラヂオ』によると、あの年代のバスはなかなかないようで、メンテナンスしているバスチームに『どうですか調子は?』と訊ねると、すごい暗い顔をしながら『わかんないです…』と答えていたとか。とくに足回りが弱いらしく、急発進と急ブレーキは厳禁とのことでした」(アメリカの自動車事情に詳しいトラベルライター)

東京に戻る和彦(田中奏生)を見送るシーンなど、ちむどん号が活躍する場面は少なくない。©NHK

 マニアならずとも気になるちむどん号だが、その元になったのは、米ゼネラルモーターズ製の「GMニュールックバス」という車種だ。1959年から1977年まで4万4000台以上が生産されたベストセラーで、バスとしてはいち早くモノコック構造を採用しているのが特徴。外装はアルミ製で、床にはドラマでも見えていたように木板が張られていた。

 エンジンは米デトロイトディーゼル製の2サイクルディーゼルを搭載。これを後部に横置きしているのが特徴で、動画「黒島ラヂオ」では薄緑色にペイントされたエンジンをバスチームのスタッフが目視でチェックしている様子も確認できる。

「この『GMニュールックバス』には4世代あり、ちむどん号に採用されているのはルーフランプの形状などからおそらく1963~1967年に製造されていたセカンドジェネレーションだと思われます。『黒島ラヂオ』には仮ナンバーを付けて公道を走っている様子も映っており、やんばる地域にある道の駅『ゆいゆい国頭』に立ち寄っていた様子。たまたま居合わせた人たちは、いきなり現れた左ハンドルの古いバスに、さぞや驚いていたことでしょう」(前出・トラベルライター)

 どうやら「ちむどん号」は若くても55歳、古ければ59歳という相当なロートル車両のようだ。しかしながら「黒島ラヂオ」では運転席周りも公開されており、シフトレバーが床から生えていないことが分かる。アメリカでは1960年代からバスにもオートマが採用されており、ちむどん号には日本でもバス用ATで高いシェアを持つ米アリソン製のトランスミッションが採用されているようだ。

そのレトロさから本国アメリカでは専門書が出るほどの人気を誇る「GM New Look Bus」。

 このように当時としては先進的な技術が採用されていた「ちむどん号」だが、そんなメカニカルな要素とは別に、美術スタッフの遊び心が反映されている箇所もあるという。それは車体の塗装などではないというのだが。

「物語中ではこのバスに『2A0315』というナンバープレートが装着されています。実はこの数字、ヒロイン黒島結菜の誕生日である3月15日をもじっており、それに気づいた黒島は『わあ、誕生日かあ!』と嬉しさを表していました。ちなみに『2A』のほうは元ネタが不明ですが、もしかしたら黒島の血液型がA型であることに由来している可能性もありそうです」(前出・トラベルライター)

 沖縄編の撮影が終わったら、このちむどん号はどうなってしまうのか。可能であれば動態保存していただき、今後のドラマでも活躍してくれることに期待したいところだろう。

※トップ画像は稲垣来泉公式インスタグラム(@kurumi_inagaki)より。