よもやこの展開も「教師と生徒の美談」で済ませるつもりなのだろうか?
7月6日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第63回では、児童との接し方に悩む小学校教員の比嘉良子(川口春奈)が、夫との会話を通じて自分の振る舞いを顧みる姿が描かれた。だがその後の展開に、視聴者が口あんぐりだったという。
児童の誠が消しゴムを拾おうとした姿を、よそ見をしていたと勘違いし、廊下に立たせていた良子。この一件をきっかけに誠は学校を休むようになり、良子は自分の考えが誠に勘違いされていたと思い悩むようになる。
しかしそれは子供のころから勉強ができ、自分は正しいとの強い意志を持っていた良子ならではのつまづきだった。良子は児童の気持ちに寄り添うことができず、常に上から目線で自分の考えを押し付けるのみだったのだ。
悩みに悩んだ良子は、別居中の夫で教員仲間でもある石川博夫(山田裕貴)に相談することに。夫婦生活を巡っては冷戦中の二人だが、大学時代には教育に関して熱い考えを持つ博夫に、良子は惚れていたものだ。
ここで良子は「自分本位ではいけないと教えていた私が、誰よりもエゴイストだった」と反省。そんな自分に教師の資格はないと嘆く。すると博夫は「俺もそんなふうに考えてたよ」と良子の想いを受け止め、「友達を大切にと教えている俺が、家族すら大切にできていない」と、自分たちの境遇を重ね合わせていたのだった。
「博夫の説明に感動し、納得した良子は翌日、一人で教室にいた誠に向き合うことに。自らしゃがんで視線の高さを合わせた良子は『誠、この前はごめんなさいね。先生を許してくれる?』と訊ねました。すると誠は『うん』と笑顔で答え、二人のわだかまりは解消するに至ったのです」(テレビ誌ライター)
長期にわたって教師の良子を拒絶していた誠が、わずか数十秒でいきなり、良子を許すことに。光速レベルの急展開には、視聴者も驚かずにはいられなかったことだろう。
良子はこの時、誠の好きなあやとりをフックに、誠の気を引いていた。それは解決に向けた第一歩ではあるが、だからといって誠がそんなに一瞬で良子のことを許すものだろうか?
「正直なところ、『誠意をもって接すれば相手は応えてくれる』という価値観の押し付けにはうんざりしますね。そもそも良子は『先生を許して』と一足飛びで問題解決に向かうのではなく、日々の態度を通じて誠の信頼を取り戻していくべき。もし良子が自分の子供の担任であれば、親として《そんな一言で許してもらえるとでも思っているんですか?》と詰めたくなりますね」(子育て中の女性誌ライター)
良子にしてもヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)にしても、簡単に問題が発生しては、簡単に解決するというパターンが繰り返される「ちむどんどん」。それなら原因不明の体調不良に悩み続ける三女の歌子(上白石萌歌)をとっと治してやってくれと、視聴者もやきもきしているのではないだろうか。