もし「鼻血が出るほど好きなものがあるか?」と問う上司に出会っていたら、私たちの人生も変わっていたのかもしれない。
7月7日深夜に第2回の放送を迎えるドラマ「量産型リコ -プラモ女子の人生組み立て記-」(テレビ東京系)。乃木坂46の与田祐希にとって地上波連ドラで初の主演ドラマとなる本作では、タイトルにも入っている「量産型」という言葉が大事なキーワードとなっている。
6月30日の初回放送では、イベント企画会社に勤める主人公の小向璃子(与田)が、仕事に情熱を持って取り組む同僚の浅井(前田旺志郎)から「いつの間に量産型の人間になってるんだよ」と呆れた顔で言い放たれていた。
その「量産型」という言葉を巡って自問自答し始める璃子。それを見た上司(マギー)から熱中しているものがあるかを訊かれ、いくつか答えてはみたものの、「それは、鼻血が出るくらい好きか?」と聞き返されてしまっていた。だが璃子は、そんなものは大人に必要ないと考えており、質問の意味が分かっていないようだ。
その帰宅途中、璃子は「矢島模型店」に出会う。薄暗い店内に大量に積まれたプラモデル。そこで目に留まった「量産型ザク」を購入し、自宅にて黙々と組み立てる璃子。放送では実に6分間にもわたって彼女がプラモデルを作成する姿を映し続けていた。手元のアップも多く、璃子の顔が見えない場面も多いのだが、それでも視聴者の興味を釘付けにしていたのである。
「この6分間は、視聴者自身がプラモデルを作成している時の目線と似ていました。璃子はこめかみに汗を流しながら作業に熱中しており、その姿はプラモデルの制作経験のある人なら共感できたはず。そこに璃子自身の目線を盛り込むことで、視聴者はより物語に没入できたのでしょう」(テレビ誌ライター)
しかし璃子はプラモデル初心者。塗装する場所を間違えてしまっては作業の手が止まる場面もあった。その出来栄えに「矢島模型店」店主の“やっさん”こと矢島一(田中要次)は「失敗は時にギフトだ」と意外な言葉を口にしたのだ。
さらに「思い切って好きなように直してみるのもいい」とアドバイスするやっさん。彼の持論は「プラモはどこまでも自由だ」というものであり、「それ通りに塗らなきゃならない、そんな掟はない」と、失敗に落ち込む璃子を元気付けていた。
「それまでの璃子は《誰かと同じ》《みんながやってたから》といった理由で物事を選んできました。つまり“量産型”の人は、自分の意思で主体的に行動することが苦手であることが読み取れます。ところが璃子は《自分の好きなように直す》という、それまで彼女が持っていなかった考え方に出会うことができた。この瞬間に璃子は、上司から言われた『鼻血が出るほど好きなもの』に出会えたのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)
プラモデルをフックにして本作が伝えたいのは<大人にだって熱中できるものが必要>だということ。7月7日放送の第2回では璃子がカーモデルに手を出す展開となりそうだが、次回予告で「ちゃんと好きになれるか、やってみます」と、未知なる世界に前向きに飛び込む姿勢を見せていた。これぞ量産型だった璃子が、鼻血が出るほどに好きになることの魅力にハマっていく姿の表れではないだろうか。
(村松美紀)