あふれ出る才能は早くも隠し切れないようだ。
11月16日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第33回では、会社を辞めて長崎・五島列島に旅立っていた梅津貴司(赤楚衛二)が、自作の短歌を幼馴染の二人に見せる場面があった。その短歌に大物の歌人が反応したと、視聴者が驚いているという。
根っからの文学青年でありつつ、あえて大学に進学せず、システムエンジニアとして就職していた貴司。しかし会社から与えられたノルマは達成できず、営業成績は最低。しかも心の拠り所としていた古書店のデラシネが閉店してしまい、彼をつなぎとめていた心の糸はぷっつりと切れてしまっていた。
そんな貴司は詩を書けなくなっていたが、デラシネ店主の八木巌(又吉直樹)から「五七五七七のリズムに乗せたら詰まってた言葉も流れ出すで」と勧られ、短歌を詠むことに。五島まで彼を探しに来た幼馴染の岩倉舞(福原遥)と望月久留美(山下美月)に、ノートに書き留めた短歌を見せたのだった。
星たちの 光あつめて
見えてきた この道をいく
明日の僕は
久留美が「なんか、かっこええなあ」とほほ笑むと、舞も「ホンマやなあ」と同調。そんな二人の反応に安心したのか、貴司は「まずは、おかんとおとん、説得せな」と、両親に向き合うことを宣言していた。自分の短歌が幼馴染に評価されたことが、素直に嬉しかったのかもしれない。
そんな貴司の短歌は、誰もが知る歌人にもまた、評価されていたのである。
「歌人の俵万智は放送終了後、『結句の倒置が、いいなあ。「僕は」って開かれて終わると、そこに無限の未来が感じられる』とツイート。視聴者からは《好評価をいただいて良かった》《才能ありですか?》など、貴司の短歌が高く評価されたことを喜ぶリプが続出していました。その俵は『舞いあがれ!』についてこれまで何度も感想をツイートしています」(テレビ誌ライター)
どうやら元から「舞いあがれ!」のファンだった様子の俵。11月11日放送の第30回に短歌が登場した時には、すかさず「言葉にすることの大切さが、心に響く朝だった。たかし君、短歌作ろう!」とツイートし、未来の歌人になるやもしれぬ貴司のことを応援していた。
そしてついに、貴司の詠んだ短歌が本編に登場したとなれば、歌人として反応せずにはいられなかったのかもしれない。この調子なら今後も、俵による解説を楽しむことができそうだ。
「作中の短歌は貴司(赤楚)本人ではなく、脚本を手掛ける桑原亮子氏の作でしょう。その桑原氏は歌人としても知られており、2011年には『歌会始の儀』で入選者10人に選出されたほどの腕前。桑原氏が詠んだであろう今回の短歌が貴司の気持ちを十二分に反映しているのも納得で、俵をはじめ視聴者の心に染み入ったのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)
果たして貴司は今後、短歌を詠むことで救われていくのか。詩歌にあまり馴染みのない視聴者でも、彼の心が再生していく過程を見ることで、短歌の魅力を感じることができるのかもしれない。