よもや本作で、視聴者が法律を気にすることになるなど、ほとんど誰も予想していなかったのではないだろうか。
11月25日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第40回では、ヒロインの岩倉舞(福原遥)が無事に航空学校の座学課程を修了。いよいよ帯広でのフライト課程に進めることになった。その一方で兄の悠人(横山裕)が怪しげな仕事に手を出していることも判明。視聴者がハラハラドキドキしているのである。
その悠人は東大在学中から個人投資家として株の売買を行っており、すでに2000万円以上を稼いでいる様子。卒業後は大手電機メーカーのIMORI電機に入社していたはずだが、この第40回ではすでに別の仕事に勤しんでいる様子が描かれていた。
「悠人は『投資助言・代理業』(旧・投資顧問業)を行っている様子。株式など有価証券の投資に関する助言を資産家などの顧客に対して行うものです。作中では悠人が個人投資家らしき人物のもとを訪れ、自分の実績をアピール。どうやら投資一任契約を結んで、資産の運用を任せてもらうつもりのようですね」(週刊誌記者)
他人のお金を預かって資産運用するには「金融商品取引法」(2007年9月以前は「有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律」)の定めに従って登録する必要がある。登録自体は個人でも可能だが、営業保証金として500万円を供託する必要があるなどハードルは高い。
もっとも悠人はすでに2000万円以上を稼いでおり、資金面の問題はなさそう。24歳の若者でも登録可能なのかという疑問はあるものの、形式上は要件を定めていれば登録できるはずだ。なんとも怪しげな場面ではあるものの、本作のオープニングロールには「金融法考証」のクレジット記載もあり、あからさまに違法な描写は避けていることだろう。
たとえば作中では投資家が「1年でいくらにできるんですか?」と訊ねる場面があった。ここで「〇%上がります」と約束するのは違法行為となる。その点、悠人は「平均して年間20%以上を狙っています」と自信を示しつつも、その前にきちんと「相場は水物なのでお約束はできませんが」と予防線を張っていた。
それでもなお、法律違反の恐れを感じさせる場面があったというのだ。それは悠人が投資家に対して自分の実績をアピールしているときに示した、パソコンの画面だったという。
「画面には医療機器メーカーの株価が約2年で7倍になったことを示すグラフが表示。画面の左上には『過去2年間の実績』とのタイトルが入っていました。一方で悠人は顧客に対して『今年1月から運用を開始して』と説明しており、わずか3カ月前に投資助言業務を始めたばかりの様子。もし登録前から業務を行っていたのであれば明確に違法ですし、業務開始以前の個人投資家としての運用実績をアピールしているのであれば、それもまた投資助言業者としてはよろしくない行為ではないでしょうか」(前出・週刊誌記者)
よもや「舞いあがれ!」にて法律違反を心配してしまう場面が描かれるとは、作風の変わりようには驚く視聴者も少なくないようだ。