【カムカムエヴリバディ】ひなたは見た!二代目モモケンが伴虚無蔵を大部屋呼ばわりしたワケとは

 その言葉には、スターならではの重みがこもっていたようだ。

 2月28日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第83話では、映画「妖術七変化!隠れ里の決闘」の敵役オーディションを開催。初代桃山剣之介(モモケン)が主演したオリジナル版で敵役を演じた大部屋俳優の伴虚無蔵(松重豊)も、20年の時を経てあらためて敵役の座に返り咲くべく、オーディションを受けていた。

 虚無蔵は若手の大部屋俳優・五十嵐文四郎(本郷奏多)とのペアで、モモケンと敵役による一騎打ちを実演。五十嵐を密かに応援しているヒロインの大月ひなた(川栄李奈)が見守るなか、二人は火の出るような熱い討ち合いを交わしていた。

 そして二人が役割を交代し、虚無蔵が敵役の番になると、オーディションを見守っていた映画主演の二代目桃山剣之介(尾上菊之助)がやおら立ち上がり、「ひとつ私がお相手いたしましょう」と宣言。父親の演じた役を、父親が対峙した敵役と同じ俳優(虚無蔵)を相手に、再現してみせたのである。

「父親に負けず劣らずの激しい討ち合いを見せた二代目モモケン。殺陣を終えたモモケンは『これが父が見た景色なんですね。20年前に』と感慨深い様子です。しかし続けて『だけどね虚無さん。あんたじゃダメなんだ』と非情の宣告。『わしが無名やからか』『セリフが下手やからか』と問うてくる虚無蔵に対してモモケンは、『私は私の左近を探しに来たんです』と告げました。すなわち父親と同じ相手を起用しても、父親を超えることはできないということだったのです」(テレビ誌ライター)

敵役の虚無蔵と激しい立ち回りを演じてみせた二代目モモケン。ドラマ「カムカムエヴリバディ」公式インスタグラム(asadora_bk_nhk)より。

 続けてモモケンは、大部屋俳優の虚無蔵が敵役に抜てきされた理由について、初代が「伴虚無蔵は桃山団五郎よりずっといい役者だ」と語っていたことを告白。「父は役者として、あんたに一目置いていたんです」と明かしたのだった。

 その言葉に、なんでもっと早く言ってくれなかったのかと悔やむ虚無蔵。「わし、二十年思いつめてましたから」との思いをぶつけると、モモケンは「なんでって、私はスターですよ。大部屋なんぞに軽々しく声はかけません」と言い放ったのである。

「このセリフに、モモケンの尊大さを感じた視聴者もいたことでしょう。しかし言われたほうの虚無蔵は『恐れ入りました』と納得していた様子。というのもモモケンは、この場面で虚無蔵に対して最大限の敬意を示していたのです。殺陣を終えて『私は私の左近を探しに来たんです』と告げた時、モモケンは座り込む虚無蔵に向かって膝をつきました。本来なら大スターのモモケンが大部屋俳優を相手に膝をつくことなどありえないはず。立ったままで虚無蔵を見下ろすべきところ、あえて膝をついての礼を示したのは、父親が認めた《いい役者》に対する尊敬の念の表れだったのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)

 そんなモモケンの想いは、オーディション会場にいた者たちにはしっかりと伝わっていたはず。だからこそ、「恐れ入りました」と言って虚無蔵が道場を後にする際に、一部始終を見守っていたひなたが微笑みをこぼしていたのだろう。

 そして若き五十嵐はチャンスをつかむことができるのか。「アラカンの五十倍」との自己紹介はモモケンから「大きく出ましたね」と評されていたが、そんな彼の立ち回りがモモケンの心に残ることを、視聴者も強く願っているのではないだろうか。