だから深津絵里は、18歳のるいを演じていたのか。視聴者もその理由に納得していたのではないだろうか。
3月15日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第94話では、“サンタ黒須”こと振付師の橘算太(濱田岳)が、姪の大月るい(深津絵里)が暮らす「回転焼 大月」を訪れる場面があった。
その10年前には回転焼きの味に惹かれ、大月家を訪れていた算太。ところがその店を切り盛りしているのが姪のるいだと気づいたことで、姿を見せることなく行方をくらましていたのである。
それが今回、あらためて「回転焼 大月」を再訪。しかも自分がるいの叔父であることを自ら明かしていたのだった。
「70歳を超え、体調も相当悪い様子の算太。おそらくは人知れず亡くなってしまうより、せめて最期は血の繋がったるいに看取られることを望んだのかもしれません。この第94話では文字通りヨボヨボになった老齢の姿と、まだ20代でダンサーを目指していた算太の両方が登場。50歳ほども年の離れた役を自在に演じ分けてみせる濱田に、役者の凄さを実感した視聴者も多かったのではないだろうか」(テレビ誌ライター)
るいを演じる深津も、作中では娘のひなたが29歳に成長。もはや孫がいてもおかしくない年齢となっている。
そのるいは昭和19年(1944年)生まれで、作中では49歳になっているはず。そしてるいを演じる深津自身も現在49歳であり、ついに役が実年齢に追いついたのである。
「深津が『るい編』のヒロインとして初登場した時、るいはまだ高校を中退したばかりでした。当時は口さがない視聴者から《深津が18歳の役ってw》《いくらなんでも無理がある》といった陰口を叩かれていたもの。それがいまや役と本人が同い年になったのですから、ここ3カ月ほどで描かれてきたるいの人生がいかに濃いものだったのかをあらためて実感しますね」(前出・テレビ誌ライター)
母親の安子(上白石萌音)が進駐軍将校と共にアメリカに渡ってしまい、安子の嫁ぎ先である雉真家で育てられたるい。父親の稔はとうに戦死しており、叔父の算太は失踪。一応は血の繋がった父方の祖父や叔父はいるものの、るい自身は天涯孤独も同然の気持ちで過ごしていたことだろう。
「そんなるいは、一人で生きていくことを決意。アルバイトで貯めたわずかな資金を手に岡山を出て、クリーニング店にて住み込みで働き始めました。そして錠一郎(オダギリジョー)と波乱の末に結婚し、ひなたや桃太郎という子どもたちにも恵まれることに。自らの手で家族を再生していったのです。その人生を描くには、岡山を出た時点からるいの役は一人の演者が務め続けるべき。それゆえ深津は18歳の姿を演じ、自らと同い年の49歳までの人生を送り続けてきたのでしょう」(前出・テレビ誌ライター)
脚本の巧みさが評価される「カムカムエヴリバディ」だが、キャスティングの妙もまた本作の魅力を支える大事な要素であることを、49歳の深津がまざまざと見せつけてくれたようだ。
※トップ画像は18歳当時のるいを演じる深津絵里。ドラマ「カムカムエヴリバディ」公式インスタグラム(@asadora_bk_nhk)より。