50年の時をさかのぼる旅は、思わぬ事実を明かしてくれたのかもしれない。
3月17日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第96話では、32年ぶりに岡山に帰省した大月るい(深津絵里)が、夫の錠一郎(オダギリジョー)と共に懐かしのジャズ喫茶を訪れる場面が描かれた。
昭和19年に雉真安子(上白石萌音)の一人娘として生まれたるいは、出征した父親の稔が戦死。母親の安子は進駐軍将校と一緒にアメリカに渡ってしまい、小学校入学時から親の愛を知らぬままに育つこととなった。
父方の祖父や叔父はいるものの、天涯孤独を感じていたるいは17歳で高校を中退し、単身で大阪に出ることに。それ以降、実家の雉真家とは一切の連絡を絶っていたが、安子の兄で自分の叔父にあたる橘算太の最期を看取ったことをきっかけに、自身のルーツと向き合う思いから岡山に帰省したのだった。
「その岡山は、大阪で知り合って結婚した錠一郎(オダギリジョー)の出身地でもありました。戦災孤児だった錠一郎は、ジャズ喫茶マスターの柳沢定一(世良公則)に育てられ、やがてトランペットをマスターして、活躍の場を求めて大都市の大阪に出ていたのです。その後に定一は亡くなりましたが、定一が営んでいたジャズ喫茶『ディッパーズマウス』と同名の店が岡山にあることを、大阪時代にお世話になったジャズ喫茶の経営者・木暮洋輔からの情報で知ることに。そこで今回、錠一郎とるいはその店を訪れてみたのです」(テレビ誌ライター)
その店にいたのは定一の息子である健一(世良公則※一人二役)。健一は、孫の慎一(前野朋哉)が再興したジャズ喫茶を手伝っており、ここでるいは母親の安子と父親の稔が初デートした様子を健一から聞くことができた。
そこに戻ってきた孫の慎一。おはぎを買ってきた彼は、そのおはぎを曾祖父である定一にお供えしていた。ここに驚くべき光景が広がっていたというのである。
「慎一が買ってきたおはぎは、はっきりとは見えませんがどうやら『御菓子司 たちばな』と印刷された紙に包まれている様子。それは安子の実家である和菓子屋と同じ名前だったのです。しかし『たちばな』は戦災で焼失し、安子の父親で二代目店主の金太は再興を目指していたものの、志半ばで亡くなっていました。戦後には安子と算太が共同で『たちばな』の立て直しを図るも、開業資金を持って算太が失踪したことで、その話も立ち消えとなっていたのです」(前出・テレビ誌ライター)
そうなると、慎一が買ってきた「御菓子司 たちばな」のおはぎは、いったいどこの店の物なのだろうか? 算太と安子は二人きりの兄妹で、ほかに家業を継ぐような親類はいなかったはずだが…。
「たちばなには3人の住み込み従業員がいましたが、全員が出征し、その後は杳として消息が分からないまま。その中で戦後に復員した誰かが、たちばなを再興した可能性もありそうです。店主が亡くなっているので“のれん分け”ではないものの、志を引き継ぐ思いで同じ名前の店を立ち上げることはありそうな話。なにより元従業員であれば、るいも受け継いでいるあんこの味を再現することはお手の物だったことでしょう」(テレビ誌ライター)
果たして慎一が買ってきたのは本当に「御菓子司 たちばな」のおはぎだったのか。視聴者もるいも気になっているであろうおはぎの正体が明かされることに、期待が高まるというものだ。