【ちむどんどん】暢子「ねえ、手繋いで」人たらしの才能がみんなを幸せにする!

 小学生のころから、すでにその才能を身につけていたようだ。

 4月22日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第10回では、東京行きが決まったヒロイン比嘉暢子(稲垣来泉)の出発までが描かれた。そこで見せた暢子の才能に、視聴者もすっかり魅了されていたようだ。

 父親の賢三(大森南朋)が亡くなり、経済的に困窮している比嘉家。すると東京に住んでいる賢三の叔母から、4きょうだいのうち一人を引き取ってもいいとの提案があり、話し合いの結果、次女で小五の暢子が東京に行くことになっていた。

 第10回は、暢子が青柳和彦(田中奏生)と一緒にシークワーサーの樹を見上げているシーンでスタート。和彦は東京の中学生で、研究旅行で沖縄を訪れている大学教授の父親と共に三カ月ほど滞在。その間に暢子や、長男で同級生の賢秀(浅川大治)らとすっかり仲良くなっていた。

 幼い時からその実を食べてきたシークワーサーを見上げながら「次に戻ってきたとき、まだあるかね、この木」とつぶやく暢子。和彦は「本当にいいのか? 後悔しないか」と、東京行きを決心した暢子のことを気遣う。後悔など「ありえん」と強がる暢子に、和彦は「だったら俺が守ってやる。東京に来たら俺を頼りにしろ」と、男気を見せたのであった。

シークワーサーの木を見に行った二人。二人で来ること自体がすでに意味深だ。トップ画像ともに©NHK

「すると暢子は『ねえ…手ぇ繋いで帰ろう』と和彦の手を握りました。『イヤだ、恥ずかしい』と振りほどく和彦。それでも暢子はもう一度手を繋ごうとして、和彦は『小学生と手なんて繋げるか!』と走って逃げたのです。そんな和彦に『はっさ…』と驚いた顔を見せ、『待って和彦くん!』と追いかけ始めた暢子。このシーンは後半へのフラグであるとともに、暢子が小五にして4歳年上の男子中学生を魅了する“人たらし”であることを示していたのではないでしょうか」(テレビ誌ライター)

 その明るい性格で周りから好かれている暢子。そんな彼女の特長は、他人の領域にぐいぐいと踏み込んでは、いつの間にか相手を魅了している「人たらし」の才能ではないだろうか。

 沖縄の北部、やんばる地区に住む比嘉家。昭和39年(1964年)当時、同地に東京から引っ越してくる中学生などほとんどいなかったはずだ。そんなやんばるに連れられてきて「こんな田舎」と馴染めずにいた和彦。だが暢子は4歳年上の和彦に持ち味の馴れ馴れしさでぐいぐいと迫り、いつの間にかきょうだい共々仲良くなっていたのである。

 そして迎えた東京行きの日。バスに乗り込んだ暢子は後部の窓から、バス停で見送る家族を眺めていた。だんだんと遠ざかる家族の姿。それまで笑顔を保っていた彼女は急に思いつめた顔になり、後部座席にへたり込んでしまっていた。

「そんな暢子の手にそっと自分の手を重ね、『大丈夫、僕がついてる』と励ます和彦。暢子が座席の背もたれに手を掛けても、彼はその手を握ったままでした。少し前には『恥ずかしい』と暢子の手を振り払っていたのに、いつの間にか暢子の流儀に染められていたようです。暢子の人たらしぶりが和彦を変え、その和彦が暢子を助けようとする。そういった人の想いが循環していく様がにじみ出ていたのではないでしょうか」(テレビ誌ライター)

シークワーサーの木の下で暢子が握った手。次には和彦が暢子の手を握ることとなった。©NHK

 最後は自らバスを降り、沖縄に残る決断を下した暢子。東京に帰る和彦はそれでも、暢子の手のぬくもりをずっと覚えていることだろう。自分に関わる人を魅了する才能にあふれた暢子。彼女自身はそんな自分の気質に気づいておらず、ただ自然に振る舞っているだけかもしれないが、今後もその才能が彼女自身も周りをも幸せにしていくのではないだろうか。