これ、おでんじゃなくてポトフじゃないの? 日本中からそんなツッコミが寄せられていたようだ。
6月3日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第40回では、本編終了後に次週予告が流れることに。その冒頭でヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)が「おで~ん♪」といって差し出したのは、おでんとは言い難い料理だった。
その具はキャベツに人参、トマトにじゃがいも、手前に見えているのはラフテー(豚三枚肉の煮つけ)だろうか。さすがに匂いまでは分からないものの、その見た目はフランス家庭料理のポトフさながらだったのである。
すると画面にはかっぽう着姿で頭に手ぬぐいを巻いた暢子が、カメラ目線で「美味しいですよ」とにっこり。あまりもの可愛らしさに視聴者も幸せな気分に浸りつつ、それでも「ありゃおでんじゃないだろう」との疑念が拭えなかったのである。
「その後、暢子が屋台を引いて歩く姿が映し出され、友人で東洋新聞社記者の青柳和彦(宮沢氷魚)が『根本的な問題じゃないか』と指摘。その言葉に視聴者が首を縦に振るなか、暢子はいつものような真っ直ぐな目線で『和彦くんに料理の何が分かるの!?』と反論です。しかし映し出されたおでんにはテビチ(豚足)まで入っており、和彦が『根本的問題』といったのも納得でしょう」(テレビ誌ライター)
これらの料理、おでんという先入観を抜きにすればかなり美味しそうで、暢子のような美人店主が引く屋台には客が殺到しそうなところだ。
しかも翌週のタイトルは「てびち!てびち!てびち!!」となっており、どうやら主役の食材はテビチの様子。それがどうおでんに繋がるのか。実はそんなエピソードこそ、本作の主人公が沖縄出身であることの必然性を物語っているというのである。
「沖縄の食文化を巡ってはゴーヤーチャンプルーや沖縄そばがいまや一般的な料理となり、おやつ代わりに天ぷらが食べられていることも広く知られるようになりました。ところが沖縄でも日常的におでんが食べられていることは、毎年沖縄を旅行しているような沖縄好きの間でも、意外に知られていないのです」(沖縄マニアのライター)
そんな沖縄風おでんは「ウチナーおでん」とも呼ばれており、メインの具はまさにテビチ。そして葉野菜を入れるのも沖縄流となっている。ほかの具材は大根や玉子など一般的なおでんと一緒だが、やはりテビチの存在感はウチナーおでんを独特な存在にしているのだ。
ただ暢子のおでんには、沖縄にもなかった具材が投入されていたという。それはいったい何だったのか?
「それはトマトです。一般的には1998年に東京・銀座のおでん専門店がトマトのおでんを始めたというのが通説となっており、これは食品メーカー・紀文の公式サイトでも説明されているほど。ただ個人が自分の好みでトマトを具にしていたことまでは否定できないので、昭和49年に暢子が独自の感性で時代を20年先取りしていた可能性はありそうですね」(前出・テレビ誌ライター)
この時代、おでんにテビチを入れることも、はたまたトマトを入れることなど、和彦の言う通り「根本的な問題」だったのは明らかだ。だが今後、暢子が一流の料理人として成長していくのであれば、トマトおでんなどの斬新な料理を考案していくこともあり得るのではないだろうか。ともかく視聴者としては暢子のおでん屋台に行ってみたくてしょうがないことだろう。