【ちむどんどん】砂利道にオート三輪?昭和53年には見えない街並みに「時代考証!」の声

 せっかくの恋バナを台無しにする演出には、視聴者もやきもきしたことだろう。

 6月28日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第57回では、ヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)が、漠然とした恋心にもやもやする様子が描かれた。

 銀座のイタリア料理店「アッラ・フォンターナ」で働き始めて7年目の暢子。昭和53年の春を迎えた彼女の心を“わじわじ”させているのが、友人で東洋新聞記者の青柳和彦(宮沢氷魚)が結婚するという話だ。

 以前から同僚の大野愛(飯豊まりえ)と交際していた和彦だが、愛の両親は二人の結婚に前向き。前回の放送ではフォンターナでの食事会にて愛の両親が、和彦と愛に対して6月にも結婚式を挙げるように提案していた。

 今回、横浜・鶴見の下宿に帰ってきた暢子は、同じ下宿に住む和彦とバッタリ。「おめでとう!」と声を掛けるも、慌てて自分の部屋に駆け戻ることに。その場にへたり込んだ暢子は「なんでうちが、わじわじーしてるわけ?」と独り言をつぶやいていたのだった。

「視聴者としては、放送12週目にしてやっと暢子の恋バナが動き始めるのかと期待を高めているところでしょう。ここはぜひ暢子と和彦がくっついてほしいところですが、和彦は愛と婚約まで進んでいますし、一方で幼馴染の砂川智(前田公輝)は暢子にぞっこん。果たしてこの四角関係がどう決着するのか。誰も不幸にならない結末に期待したいものの、なかなか難しそうです」(テレビ誌ライター)

 中盤では暢子と智がなぜかフォンターナでデートすることに。この場所を指定したのは暢子のほうで、おそらくは智にペースを握られたくないからだろう。すると和彦と愛の二人もランチのために来店。四角関係の構図がますます浮き彫りとなっていたのは、この日のハイライトだったかもしれない。

 果たして暢子と和彦のすれ違う想いはどうなるのか。視聴者の期待も高まるなか、そんなドキドキを台無しにするような演出が終盤で繰り広げられたという。それは食品卸会社に勤めていた智がついに独立を果たし、自分の店「スナガワフーズ」を開業した場面でのことだった。

「智は横浜・鶴見にて自分の店を開き、仕入れも配達も全部自分一人でこなしていました。その場面でなぜか、画面に映るものすべてが昭和30年代テイストとなっていたのです。配達はオート三輪のトラックで未舗装の砂利道を走り、商店などの建物は木枠の窓が目立つ古い木造家屋ばかり。これでは昭和33年の東京を舞台にした映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の世界観さながらですよ」(前出・テレビ誌ライター)

オート三輪が活躍したのは昭和30年代が中心で、昭和50年代にはもう時代の遺物的存在になっていた。

 オイルショック後の昭和53年(1978年)はインフラ整備が大きく進展し、「三丁目の夕日」的な昭和の風景がどんどんと現代風に塗り替えられていった時代だった。

 鶴見(横浜市鶴見区)のような都市部では路地も次々と舗装され、配達車両では軽トラックが普及。首都圏どころか地方都市でも、砂利道やオート三輪を見かける機会はほとんどなくなっていたのである。

「朝ドラには当時を知る50~60代の視聴者も多く、《昭和53年にはオート三輪なんかもう走ってなかったよ》《時代考証がおかしい!》といった指摘が続出しています。なぜそんな時代遅れのアイテムを登場させるのか、その狙いが今一つ理解できないのですが、制作側には《昭和=大昔》という固定観念があるのかもしれません」(前出・テレビ誌ライター)

 視聴者は「ちむどんどん」に、昔懐かしい景色を期待しているわけではないはず。ともあれ暢子の恋バナが進展することを楽しみにしたいものだ。

※トップ画像は©NHK