もはや間違いがない回を探すほうが難しいのかもしれない。
7月12日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第67回では、東洋新聞社の学芸部に勤める大野愛(飯豊まりえ)が、上司の田良島デスク(山中崇)から労いの言葉を掛けられる場面があった。そのシーンにまたもや、残念な間違いが発見されたのだという。
愛は同紙の大型連載企画にて、自身の発案した「ズボンをはいた女の子」が採用されることに。女性の社会進出とファッションの関係をテーマにした企画で、田良島デスクからは自分が書きたいことを書けとのアドバイスを受けていた。
愛は友人でヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)や恋人で同僚の青柳和彦(宮沢氷魚)らにも協力してもらい、特集記事を完成。無事に掲載されるも、上層部からは<女性からの視点に偏っている>と批判され、落ち込んでいたのだった。
「すると今回、田良島デスクが『特集記事の反響』と言いながら大量の投書を愛に手渡しました。どんな批判が書かれているのかと不安げな表情を見せる愛。意を決して投書に目を通すと、そこには《大きな励みになりました》《女性の境遇を伝えてくださり、胸のすく思いです》といった感謝や応援のメッセージが綴られていたのです。なかには《弱虫だった私に勇気と希望を与えてくれました》という投書もあり、愛が特集記事を通して伝えたかった内容が、女性読者たちに届いていたことが分かる場面となっていました」(女性誌ライター)
その投書を手に「これ…」と話しかけると、田良島デスクは「大野の声は、読者に届いた。頑張った甲斐があったな」と愛の頑張りを労うことに。その言葉に涙ぐむ愛。彼女の真っ直ぐな想いが、世間に受けいれられたという感動的なシーンになっていたのである。
このように一見、何の問題もないように思える描写だったが、実はここに、これまた時代考証のミスが潜んでいたというのだ。それは愛が手にした投書の中に紛れ込んでいたのである。
「愛が目にした3通目の投書には『鎌田侑由子』という差出人の名前が書き添えてありました。他の投書にも名前の書かれているものが多く、制作側は多くの仮名を考えたのでしょう。しかしここに問題があったのです。というのも侑由子の『侑』は、1981年10月1日から人名用漢字として使えるようになった漢字。しかし物語は1978年(昭和53年)なのですから、侑由子さんから投書が来ることは有り得ないのです」(前出・女性誌ライター)
これまで何度も改訂されてきた人名用漢字では1981年に、侑や璃、遥や遼など今ではごく一般的な漢字を含む全54字が追加された。これはちょっと調べれば誰でも分かることだ。
しかしそこは「ちむどんどん」。これまでにも当時は存在していなかったペットボトル入りの醤油が使われていたり、平成になってから成立した「厚生労働省」の名称が新聞記事に記載されていたりと、その時代考証がいかにいい加減なものなのかは繰り返し指摘されてきたところだ。
「たかが人名用漢字と思う人もいるかもしれませんが、本作では東洋新聞社という全国紙を重要な舞台の一つとしており、作中に登場する紙面や文字の推敲では念には念を入れるべき。しかし前回も愛の書いた特集記事にて、フランスで1920年代に女性参政権が成立していたとの記述があるなど(実際は1945年)、時代考証のチェックが甘すぎることには呆れてしまいます。この調子では今後も、同様のミスは続いていくことでしょう」(前出・女性誌ライター)
毎回のように何らかのミスが見つかってしまう本作。もはや視聴者は、異なる世界線での物語だと割り切ってしまったほうが、精神衛生上はいいのかもしれない。