これまで彼女の服装に疑問を感じていた人も、多かったに違いないだろう。
7月13日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第68回では、横浜・鶴見の沖縄県人会による夏の恒例企画「沖縄角力大会」の様子が描かれた。そこに現れた大野愛(飯豊まりえ)の姿に違和感を抱く人も少なくなかったという。
大会では沖縄県人会の会員が勢ぞろいし、ヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)が下宿している沖縄料理店の「あまゆ」も臨時休業。暢子は料理人の腕前を活かして大量の沖縄風天ぷらを揚げ、参加者用のお弁当を作っていた。
角力大会には東洋新聞記者の青柳和彦(宮沢氷魚)も参加。東京生まれながら中学生の時に3カ月間、沖縄やんばる地方に住んでいた経験があり、記者として沖縄の歴史を書きたいという強い希望を持っていることから、取材の一環として沖縄角力に挑戦する構えを見せていた。
海岸で開催された大会には、和彦の同僚で恋人でもある愛も訪れることに。暢子は愛にも弁当をわたし、「愛さんは県人会の大事なお客さん」とニッコリ。あまゆにもよく足を運んでいる愛はすっかり身内扱いのようだ。
「そんな愛の服装は大ぶりのつばがついた帽子に、浜崎あゆみばりの大きなサングラス。そしてレインボー柄の半袖ニットというなかなか個性的な装いです。作中の昭和53年(1978年)はまだヒッピームーブメントのさなかにあり、サイケデリック調のデザインは当時の雰囲気を伝えていました」(女性誌ライター)
これまでは良家の子女らしい清楚な服装ばかりだった愛だが、この日は派手なニットに加えてボトムスもオレンジ色のズボンを合わせており、快活な雰囲気を装うことに。さすがはファッション関係の記事も得意とする新聞記者といった感じだろうか。
だが視聴者からはそんな愛の服装について<唐突感が半端ない><これって辻褄合わせだよね>といった声もあがっていたという。それはどういうことなのか。
「前回まで愛は東洋新聞に、自分が発案した特集記事『ズボンをはいた女の子』を連載していました。これはファッション面から女性の社会進出を分析する記事で、1920年代あたりからの世界と日本における女性ファッションの変化について考察したものです。ところがそんな社会派の記事を書いておきながら、当の愛自身がズボンを履いている場面は、今回が初めてだったのだから驚きです」(前出・女性誌ライター)
ここ10回ほどの放送を振り返ると、愛はベージュのスカートやこげ茶のスカート、水玉模様のワンピースやデニムのワンピースなど、常にスカートかワンピースを着用。前回には上司の田良島デスク(山中崇)から記事について労いの言葉を掛けられる場面があったが、そこでも紺色のスカートを履いていたのである。
このように常にコンサバな服装しかしてこなかった愛が「ファッションと女性の社会進出」を記事のテーマに選んだのはいかにも不自然な話。当時は女性解放運動のウーマンリブ運動が日本でも盛り上がっていたが、彼女はそういった世相に疎かったのだろうか?
「それが今回、愛がいきなりズボンを履いてきたのはなんとも唐突な話。これは制作側が、愛自身が『ズボンをはいた女の子』ではないことの不自然さに気づいたからではないでしょうか。制作側ではおそらくヒロインの暢子を『ズボンをはいた女の子』の象徴に位置付けていたはず。その対比として愛にはスカートを履かせていたものの、物語を進めていくうちに辻褄が合わないことに気が付いてしまったのかもしれません」(前出・女性誌ライター)
前作の「カムカムエヴリバディ」では回が進むにつれ、ち密に張り巡らされた伏線や、舞台設定の巧妙さに視聴者が感心していたもの。それに対して「ちむどんどん」ではどうにも行き当たりばったり感が否めないのはどうしたことか。
本作では制作陣が、先に最終回を決めてから第1週の脚本を作るという制作スタイルだったことを明かしている。しかしその目論見は今のところ、いまひとつ実を結んでいないのかもしれない。