【ちむどんどん】視聴者は重子の味方!「前時代的な母親」の筋書きはもはや破綻か

 どうやらヒロインの肩を持つ人はあまり多くないようだ。

 7月26日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第77回では、結婚の報告で実家を訪れた青柳和彦(宮沢氷魚)が、母親の重子(鈴木保奈美)と口論することに。その場面で多くの視聴者が母親のほうに肩入れしていたという。

 和彦は沖縄出身のヒロイン・比嘉暢子(黒島結菜)と結婚の約束をしたばかり。だが母親の重子は「結婚は、許しません」とにべもない。それどころか息子の和彦に「あなたは騙されている!」と言い放つ始末だった。

 前回、暢子に対し「サーターアンダギーさん?」と問いかけていた重子だったが、それはブラフだった。和彦と暢子が訪ねてくるまでのあいだに重子は、暢子について徹底的に調査。出身地や年齢、家族構成はもちろんのこと、実家では借金返済のためにサトウキビ畑を手放していたことや、現在もまだ金融機関に借金があること。さらには姉の良子(川口春奈)がしばらく夫と別居していたことまで調べ上げていたのである。

「その上で重子は『家の格が釣り合いません』とピシャリ。重子の実家は明治以来の実業家で、父親は銀行の重役。そして青柳家は代々、大学教授や文筆家も多い学者肌の家柄だそうで、重子は『あなたのことを悪く言うつもりはないの。和彦とは釣り合わないと言ってるだけ』と、暢子を突き放したのでした」(女性誌ライター)

 どうやら制作陣は、重子のことを「前時代的な母親」として描きたいようだ。家柄や家格といった旧来のしきたりにとらわれ、個人の価値観を顧みることなく、息子の結婚には母親の立場で反対してみせる。そんな「旧き悪しき慣習」の象徴という記号的な役割が与えられているのだろう。

 それに対して和彦と暢子のカップルは当人同士の合意を何よりも尊重し、家族愛という心の問題を重視。旧い因習にとらわれることなく、個人の価値観で物事を進める現代風の自立した個人といったところか。これまた「現代的な若者」という記号を演じさせられているのである。

「そういった新旧の対立を提示したうえで制作陣は、視聴者が和彦と暢子の二人を応援してくれると踏んでいるのでしょう。しかし現実は、多くの視聴者が重子の言い分に《家柄って大事だよね》《お母さんの言う通り》などと賛同。和彦と暢子が結婚しても、すぐに上手くいかなくなると指摘する声が大きいのです」(前出・女性誌ライター)

母親の重子から結婚を反対される和彦と暢子。トップ画像ともに©NHK

 しかも和彦は「僕は好きで母さんの子に生まれたわけじゃない」と言い放ち、重子の子供に生まれたことを後悔していると主張するも、その発言に不快感を露わにする視聴者が続出していたのである。

 前日の放送では、和彦の上司である東洋新聞の田良島デスク(山中崇)に「母親の一番の不幸は息子と結婚できないことっていうからな」と言わせ、大炎上することに。その翌日には息子のほうが母親に反発してみせたのだから、視聴者は前日の失言をまたもや思い返していたことだろう。

「そもそも和彦が、長年の恋人だった大野愛(飯豊まりえ)との婚約を解消してから一週間も経たないうちに暢子と結婚の約束を交わしたことには、多くの視聴者が憤慨しています。それでも制作陣は、視聴者が無条件にヒロインを応援するとでも思っているのでしょうか。朝ドラ史上、これほど祝福されないカップルは珍しいものですが、そう仕向けたのは当の制作陣自身であることを自覚してもらいたいものです」(前出・女性誌ライター)

 どうやら暢子は美味しいものを作って食べてもらえば、重子も二人の結婚を応援してくれると考えている様子。だが多くの視聴者は<そんなこと、ありえん!>と思っていることだろう。