【ちむどんどん】もはや時代考証を完全放棄!暢子の料理店に26年後のレジスターを設置

 どうやら小道具担当のスタッフもあきらめの境地に入ったのかもしれない。

 8月30日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第102回では、ヒロインの青柳暢子(黒島結菜)が開業する沖縄料理店に、思わぬ助っ人が現れることとなった。その作中に、あまりにも時代にそぐわないアイテムが出現していたという。

 暢子の妹で沖縄の実家に住んでいる比嘉歌子(上白石萌歌)は、幼馴染の砂川智(前田公輝)からプレゼントされたネックレスを大層喜んでいる様子。小学生のころから6歳年上の智に恋をしており、智が暢子にプロポーズしてフラれた今でも、その気持ちに変化はないようだ。

 一方で智は暢子にフラれるも、本人いわく、気持ちはすっかり吹っ切れている様子。しかも仕事で東京と沖縄を往復しているうちに、歌子への好意が恋心に発展していたようで、ネックレスもわざわざ東京・原宿で購入してきたのだった。

「そんな二人の様子を見た姉の石川良子(川口春奈)と母親の比嘉優子(仲間由紀恵)は、歌子を暢子の料理店に住み込み従業員として勤めさせることを画策。そうすれば、横浜・鶴見で食品卸会社を営む智と交際に発展できるという考えのようです。二人は暢子に内緒で歌子を上京させ、驚いた暢子に後から電話で事情を説明していました。その電話の場面に、驚くべきアイテムが映っていたのです」(テレビ誌ライター)

 料理店の厨房に置かれた電話で実家の母親と話をしていた暢子。電話機の横には料理店の営業に必要な機器であるレジスターが置かれていた。8月25日放送の第99回で、店舗工事の際に搬入されていたものだ。

 そのレジスター、昭和54年(1979年)の設定にしてはどうにもデザインが平成っぽい様子。アップになる場面では「XE-A127」という型番がしっかり読み取れていた。その型番に、視聴者がびっくり仰天だったというのである。

「シャープ製の電子レジスター『XE-A127』はなんと、2005年に発売された製品だったのです。昭和54年当時、すでに電子レジスターは商品化されていましたが、そのサイズは公衆電話機並みであり、『XE-A127』のような小型のレジスターはなかったもの。それにデザインや表示部のLEDディスプレーを見れば、当時の製品でないことは一目で分かるはず。もはや制作陣には時代考証の概念がないのかと驚かされます」(前出・テレビ誌ライター)

厨房の電話で母親と会話する暢子。その隣に26年後の未来から来たレジスターが置かれていた。トップ画像ともに©NHK

 もっとも、この「ちむどんどん」に時代考証を無視したアイテムが出てくるのは珍しいことではない。その好例が、智の開業したスナガワフードで配達車両にオート三輪を使っていたことだろう。

 昭和50年代にそぐわないオート三輪の登場には批判が続出していたが、一部の視聴者からは「当時はまだオート三輪がギリギリ現役だった」と擁護の声もあった。だがその擁護も、作中に登場した車体を見れば的外れだったという。

「なにしろ智が乗っていたのは、昭和38年には生産が終了していた『くろがね』ブランドのオート三輪でしたからね。しかもそのオート三輪は前作『カムカムエヴリバディ』にて、自転車を漕いでいたヒロインの安子(上白石萌音)をひき逃げしたのとおそらく同一のモデル。同じ個体かどうかまでは不明ですが、2019年下半期の朝ドラ『スカーレット』にも同じ個体と思われるオート三輪が登場していたものです」(前出・テレビ誌ライター)

 つまり昭和20年代にはすでに存在していたオート三輪を、「ちむどんどん」では昭和50年代の場面で使っていたこととなる。もとよりオート三輪は製品寿命が短く、作中の時代では交換パーツも存在しないことから、マニアでもない限り「くろがね」を現役で使い続けることなど不可能だ。しかし制作陣は昭和50年代初頭がよほど昔のことだと思っていたのか、平気で骨とう品もののアイテムを作中に登場させていたのである。

 その一方で今回は、20年以上も未来のアイテムを登場させるという大ポカ。しかし、NHKの小道具担当者がそんな矛盾に気づかないとも考えづらいところだ。もしや、制作陣が時代考証に無頓着なことに呆れ果てたうえでの、無言の抗議だったのかもしれない。