こういう朝ドラを観たかった! 日本中からそんな声があがっていたようだ。
10月5日に放送されたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」の第3回では、ディテールにこだわった描写に加えて、演者の繊細な演技が視聴者を魅了していたという。
ヒロインで小3の岩倉舞(浅田芭路)は身体が弱く、すぐに熱を出しがち。医者から環境を変えるように勧められたことから、母親のめぐみ(永作博美)は舞を連れて、故郷の長崎・五島列島にしばらく転居することを決意した。
五島の港で二人が乗るフェリーを待ち受けていたのは、祖母の才津祥子(高畑淳子)。小型船と軽自動車を乗り継いで自宅に戻るも、終始ムスっとした態度を見せており、舞は「おばあちゃん、怒ってる?」と心配顔だ。それは15年ぶりに会う娘に対する複雑な感情の裏返しだったのである。
「母娘の会話、そして家を訪ねてきた幼馴染の信吾(鈴木浩介)と交わした会話から、めぐみが駆け落ち同然に島を出て行ったことが明かされました。母親と没交渉だっためぐみは、娘の舞に加えて悠人(海老塚幸穏)という息子がいることも説明しましたが、祥子からは『元気でやっとるちゅうとは知っとった』と意外な返事。実はめぐみの夫である浩太(高橋克典)が毎年、写真付きの年賀状で家族の様子を報告していたのです」(テレビ誌ライター)
祥子から手渡された年賀状に目を通すめぐみ。昭和62年(1987年)の年賀状には「2月に生まれた舞ももうすぐ1歳です」と書かれており、舞が昭和61年2月生まれであることが判明だ。また昭和64年の年賀状には舞の七五三で正装した家族の写真があしらわれていた。
最初の年賀状には赤ん坊の舞が写っており、2枚目にはまだ幼い舞と悠人の姿が。わずか10数秒のシーンのためにそれぞれの年齢に応じた子役を起用し、年賀はがきも実際に使われていたものを用意するなど、細かすぎるディテールには視聴者も<これぞ朝ドラ!>と感心していたようだ。
年賀状をきっかけに母娘が会話するなか、最初の登場シーンではめぐみと舞をニラみつけるような態度だった祥子の表情も、徐々に緩んでいくことに。幼馴染の信吾が会話に割り込んできた場面では笑顔も見せるなど、少しずつ移り変わる感情が繊細に表現されていたのである。
「年賀状を眺めるめぐみは、子育てに疲れ果てた母親の顔つき。それに対して年賀状に写るめぐみはハツラツとした笑顔を見せており、いかにも20代の若き母親という感じだったのも印象的でした。信吾との会話では高校卒業から15年経ったことが明かされ、部屋には中学校の卒業時に贈られた皆勤賞の賞状も。これらの情報からめぐみが昭和36年度(1961年度)生まれであることが示されるなど、テロップやナレーションに頼らない状況説明には感心するばかりです」(前出・テレビ誌ライター)
わずか15分間の放送で、15年前の駆け落ちから現在に至るまでの状況がたちどころに示されたこの回。巧みな脚本と作りこまれた小道具、そしてめぐみ(永作)と祥子(高畑)が見せた繊細すぎる演技に、視聴者からは「作りが丁寧だ」と感心する声が続出していた。これで早くも今後の放送が楽しみになってきたことは間違いなさそうだ。