こういうちゃんとしたドラマを見たかった! そんな喝采を送る視聴者も多いようだ。
10月3日にスタートした2022年度下期のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」。将来的にパイロットを目指すヒロインの岩倉舞(浅田芭路)はまだ小3で、すぐ熱が出てしまう身体の弱さに苦しんでいる最中だ。
10月4日放送の第2回では医師から環境を変えるように勧められ、母親のめぐみ(永作博美)は舞を連れて故郷の長崎・五島列島にしばらく里帰りすることを決断。早くも物語は大きく動き出すこととなった。
そんな物語序盤にてさっそく、視聴者からは感心する声が多数あがっているという。それは本作において様々な「考証」がしっかりしているからだというのである。
「なにしろ9月まで放送されていた前作の『ちむどんどん』ではあらゆる考証が軽んじられ、視聴者から《ファンタジー世界での物語だから》と失笑されていたほど。考証無視の例は枚挙にいとまがなく、昭和30年代の新聞に当時はまだ存在していない“厚生労働省”の表記があったり、本土復帰前の沖縄に自衛隊がいたという致命的な表記ミスまであったものです。作中に出てくる様々なアイテムも昭和40~50年代にそぐわないものばかりで、あまりもの考証軽視に視聴者は呆れかえっていました」(テレビ誌ライター)
そんな問題作を観た後だと、「舞いあがれ!」の序盤にて再現されている平成6年(1994年)当時がいかに正確に描かれているのかが際立つというものだろう。
たとえば五島の友人からめぐみに送られたハガキには、当時流通していたメジロ柄の50円切手が貼られていたほか、郵便番号はまだ3ケタか5ケタの時代で、東大阪市の577が記載されていた。
また一方では、岩倉家に置かれている様々な電化製品がいかにも1994年っぽいと、視聴者の興味を惹いていたのである。
「炊飯器はハンドルと蓋が一体になったタイプで、おそらく1980年代の代物。本体の下側に小さなスイッチが付いていることに気づいた方もいたと思いますが、当時の炊飯器には“炊飯”と“保温”のスイッチが設けられていたものです。ナショナル製もしくは象印製に見えましたが、もしかしたら制作側が独自にデザインした代物かもしれません。また冷蔵庫も古いタイプの4ドア。最近のモデルとはドアハンドルの形状が異なっており、これも当時の製品を模しているのは明らかです」(前出・テレビ誌ライター)
視聴者のなかには岩倉家に、コードレス親機を兼ねたファックス電話機が置かれていることが気になった人もいることだろう。当時、すでに各社からはコードレス電話機もファックス内蔵モデルも販売されており、家庭用では感熱紙タイプがほとんどだった。
作中の電話機はモデル名が判然としないものの、パナソニックの「おたっくす」シリーズに見た目が似ており、当時の製品をどこからか引っ張り出してきた可能性もありそうだ。
「このように1994年の世相を忠実に採用しているのに対し、前作の『ちむどんどん』ではヒロインの暢子が昭和54年(1979年)にオープンした沖縄料理店にて、2005年に発売されたレジスターが使われているというとんでもない場面もありました。片やヒロインの自宅をじっくりと作りこみ、片やヒロインの店をやっつけ仕事で作るという差は、どこから生まれたのか。一部の視聴者からは『舞いあがれ!』の出来栄えに関して《さすがBKクオリティ!》との声もあがっているようです」(前出・テレビ誌ライター)
朝ドラを巡っては「AK」と呼ばれる東京放送局が制作する上期と、「BK」と略される大阪放送局が担当する下期において、クオリティの差があるとの指摘が後を絶たない。
実際にはプロデューサーや制作統括、脚本家といった制作陣の属人的な部分に原因がありそうだが、2作前の「カムカムエヴリバディ」に続いて「舞いあがれ!」でも視聴者納得のクオリティを見せた日にはやはり、<朝ドラはBKに限る>との声があがるのも無理はなさそうだ。