【能條愛未主演舞台「りさ子のガチ恋♡俳優沼」インタビュー】胸がキリキリする感覚を味わってほしい

 女優の能條愛未が舞台「りさ子のガチ恋♡俳優沼」(11月3~6日、全7公演)にて、新山りさ子役で主演を務める。同作は26歳の地味なOL・りさ子が舞台観劇にハマり、イケメン舞台俳優の翔太を熱心に追いかけていくなかで、出待ちや稽古場突撃、カノジョ特定などだんだんと突飛な行動に出ていく姿を描いたもの。俳優とファンの愛憎劇に切り込んだ意欲作だ。

 りさ子を演じる能條は元乃木坂46の1期生であり、グループ卒業後の現在も舞台女優としてステージの上で活躍する側に立っている。そんな能條がファンの側を演じるとどうなるのか? asageiMUSEでは今回、約3年ぶりの主演舞台を務めることになった能條に同作に掛ける想いや、舞台女優としての現在位置などについてインタビュー。今回の前編では主に作品の内容についての話を訊いた。

【能條愛未】
1994年10月18日、神奈川県生まれ。
2011年に乃木坂46の1期生オーディションに合格し、2018年までメンバーとして活動した。グループ卒業後は女優として舞台をメインに活動。11月3日~6日の舞台「りさ子のガチ恋♡俳優沼」では主演の新山りさ子役を務める。12月29日開幕の舞台「風都探偵 The STAGE」にはときめ役で出演。生駒里奈も出演しており、乃木坂46のメンバーと共演するのは卒業後で初めてとなる。

舞台「りさ子のガチ恋♡俳優沼」

――本作では俳優にガチ恋するファンのりさ子を演じますが、ご自身が女優であり元アイドルであることはどのように役立ちましたか。

能條 台本を読んだ時に、自分はこれまでファンの方の心理にあまり向きあえていなかったのではないかと思いました。どれだけの思いで劇場に通ってくださっているのか、握手券を買っていただいていた思いの強さについて、台本を読んで改めて反省させられた気持ちです。ファンの方がコンサートや舞台を観ることで、仕事や学校を頑張ろうって思ってくださると私も嬉しいです。だからこそ私も覚悟を持って頑張らなければならないんだな、もっとこういう気持ちでやらなければいけなかったんだなと考えさせられました。

――現役アイドルのみなさんにも観てもらいたい作品になっているのでは。

能條 アイドルもそうですし、女優や歌手といった表舞台に立つ者の責任というものをすごく考えさせられる作品になっていると思います。りさ子は最初のうちは2.5次元の俳優を純粋に応援していますが、やがて本気で恋をしてしまい、カノジョの匂わせにも「そんなネットの噂には惑わされない」と思いつつも、もしかしたら本当なのかもしれないという想いと戦い続けて、最後は超えてはいけない一線を超えてしまいます。そういった心の動きを観てもらいたいです。

――りさ子は常に最前で全通するなど本当に「ガチ恋」していますが、そんな役柄への印象は。

能條 私にも毎公演を観に来てくださるファンの方がいますし、りさ子のようなファンの方は実際にいると思います。だから、りさ子はいまこういう気持ちなんだろうなというのは、身近にそういったファンの方がいるからこそよりリアルに感じられました。

――今回の舞台は主演の能條さんにとって“座長公演”という形になります。

能條 初めて座長を務めた舞台「少女革命ウテナ」から3年くらいが経ち、久しぶりの座長公演になります。当時よりも舞台経験を重ねているがゆえに、座長の重みや責任感、プレッシャーをより実感しています。最初この舞台のお話をいただいた時に、昔だったら「嬉しい、やりたいです!」とすぐに答えたと思うんですが、今回は「ちょっとどうしようかな…」という迷いもありました。

――座長として稽古のなかで気をつけていることは。

能條 「主演だ、座長だ」と思うと不安や緊張などマイナスの気持ちばかりが出てきてしまうので、稽古中にはあまり捉われすぎないようにしています。共演のみなさんとはクラスメイトと言える距離感になれるくらいに、主演だけどみんな同じという感覚でいたいですし、みんなにもそう思ってもらいたいです。

――今回の舞台では演者さんたちの世代が近いですね。

能條 みんな同年代なので本当に学校という感覚。みんなで仲良く楽しくやろうという感じですね。年の差があると、稽古中に先輩が座っていなかったら自分も座っちゃダメとか、そういうことにも気を配らないといけないので。

――主役のりさ子はご自身と比べてどんな存在ですか。

能條 性格は私とさほど似ていませんが、唯一重なる部分は「自分に自信が持てない」というか「周りの目を気にしてしまう」ところ。りさ子は決して「私を見て!」というタイプではなく、私生活では影の部分にいるような女の子なので、そんなところは似ているのかなと思います。演じている時にも「ここはちょっと気持ちが分かるな」という時がありますね。

――「自分に自信が持てない」という言葉は少し意外に感じます。

能條 周りからは「あんまり緊張しなさそう」って言われるんですけど、全然そんなことなくて、臆病な性格なんです。これまでいくつもの舞台に出演していますが、それでも毎回初めてのような気持ちになります。震えも止まらないし「なんでこんなに緊張しなきゃいけないの!?」ってくらい緊張するんですよ。

――今回の舞台は再々演ということで、初演と再演では元モーニング娘。の新垣里沙さんが主演を務めてらっしゃいました。

能條 台本よりも前にDVDをいただき、拝見しました。新垣さんが主演されていた作品なのでプレッシャーはあります。元アイドルで現在は女優という肩書きが一緒ですし、どうしても比べられてしまうとは思いますが、いま稽古をしているなかで、新垣さんの時とは全然違う「りさ子」が自分の中でちゃんとできてきていることを実感しています。作品全体でも演出家さんが別の方なので、結構違っているんですよね。初演や再演を観た方からしたら「このシーンをこんな解釈でやるんだ」って驚かれると思います。セリフはまったく一緒ですけど全編を通して演出が違うので、そこは注目してほしいですね。

――演出家の方が違うと、舞台がそんなに変わるものなんですね。

能條 同じセリフ、同じシーンをやっていても、解釈の違いで全然違うものになります。観終わった時の感想も前回とは違うだろうなと思いますね。

――今回の舞台では、観終わった時に爽快感などは得られそうですか?

能條 最後、りさ子のめちゃめちゃ長いセリフがあって、それまで溜めて溜めて溜め込んできた想いや感情っていうものを、ようやくここで出すことができる、あふれてしまうというシーンがあります。そこは観ている側もかなり苦しくなってしまうかもしれませんが、ある意味、爽快感があるのかなって思います。

――能條さん自身は何か溜め込んでいたものを吐き出した経験はありますか。

能條 普段はそこまで溜め込むことはないのですが、ないからこそ、演じていて気持ちがいいと言いますか。りさ子のように感情をぶちまけて、人目を気にせずに泣きながら喋るようなことがないからこそ、舞台ではそれができてしまうのが楽しいですよね。普段できないことをできることが舞台の面白さだと思います。

――能條さんを以前から知るファンの方は「こんな演技をするんだ?」って驚きそうですね。

能條 ファンの方からはよく、それ以前の舞台と比べて「あの役と近かったよね」とか「あの時の作品の役柄っぽかったよね」と言われることもありますが、今回はどの作品にも当てはまらないと思うので、そこは楽しみにしていてほしいです。

――ファンの方との関わりで言うと、10月22日にバースデーイベントを開催されます(※取材は同イベント以前に実施)。

能條 これが初めてのバースデーイベントになります。乃木坂46を卒業して3年半経ちますが、卒業してからは新型コロナ禍もあり、ファンの方と交流できるイベントができなかったんです。みなさん、客席からステージ上の私を見てくださっていましたが、ようやく近い距離で目を見ながらお話できることがすごく楽しみです。これからはこういった「ファンの方とのイベント」を定期的にやっていきたいと思っています。

――最近はコロナ対策のため、舞台後の握手会もなくなっていますし、坂道グループでも握手会ではなく「オンラインミート&グリート」がメインになっています。

能條 生の握手会を経験している身からすると、オンラインだと雰囲気が全然違う感覚ですね。やはり直接会える、お互いに相手の顔を見るというのはすごく大切だと思います。私はファンの方に直接お会いしたいタイプなので、舞台ではどう見えているのかもファンの方に聞けたらいいなと思ってます。

――コンサートだとお客さんの顔が全然見えないといいますが、舞台ではどうなんでしょうか。

能條 私はあえて見ないようにしています。見えちゃうともうダメなんですよね、意識しちゃって。だからお友達とか、お世話になった演出家の方が観に来てくださるときでも、私はなるべく事前に知りたくなくて。「今日見に行くよ!」って言われちゃうと、「ああ、見に来るんだ。失敗しないかな…」とか気になっちゃうので知りたくない。だから客席も見ないようにしていますし、もしりさ子がいても一切、シャットダウンしてます(笑)

――りさ子はそのシャットダウンを突き抜けて、自分の思いを伝えようとしているんでしょうね。

能條 ファンの方がよく「目が合った気がする」って言うじゃないですか。それを本当に真に受けてしまうのが、りさ子。だから今回の舞台も観る方によっては心が苦しくなったり、胸が痛くなってしまうかもしれません。自分もりさ子のようにならないように気をつけよう…そう感じる方もきっといらっしゃるんだろうなって思います。

――最後に今回の「りさ子のガチ恋♡俳優沼」、興味はあるけど観に行こうかどうかを迷っている方へのメッセージをお願いします。

能條 今回は“沼”がテーマですが、ガチ恋まではいかなくても何かを好きになる、誰かを好きになるというのは誰しもが経験したことがあると思います。そういった部分で絶対に共感してもらえる物語になっています。度を越した“恋心”だったり、そういうものが目を覆いたくなるくらいに繊細に描かれている作品ですので、ぜひ劇場に来て、胸がキリキリ痛くなってしまうその感覚を生で味わってほしいです。私も魂を込めて演じたいと思っていますし、その気持ちをお届けできるように頑張りますので、ぜひ観に来てくださったら嬉しいです!

【公演情報】
公演名:りさ子のガチ恋♡俳優沼
期間:11月3日(木・祝)〜11月6日(日) 全7公演
会場:ニッショーホール(旧ヤクルトホール)
チケット:S席9800円(特典付き)、A席8500円(特典付き)、B席7500円
ローソンチケット(Lコード:35425)、チケットぴあ(Pコード514-581)、イープラス、カンフェティにて販売中
配信:11月6日(日)12:00および16:00
※アーカイブ期間:11月6日(日)公演終了後~11月13日(日)
配信チケット:5000円 イープラスにて販売中

(取材協力:馬杉美希、岡山夏乃葉、Issey Nakanishi/撮影:吉田耕一郎)