現実とのギャップをどう解消するのか。航空ファンとしては興味津々なところだろう。
11月10日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第29回では、ヒロインの岩倉舞(福原遥)が旅客機のパイロットになりたい夢を持ち始める姿が描かれた。そんな彼女に航空ファンのあいだから疑問の声があがっているという。
浪花大学の人力飛行機サークル「なにわバードマン」に入部した舞は、2004年8月に行われた記録飛行にて、パイロットとしてスワン号を操縦。新記録達成はならなかったものの、10分間の飛行で琵琶湖の上を3.5キロ飛び、空を飛ぶ楽しさを体感していた。
3回生が引退したなにわバードマンでは、翌年に向けての新体制を発表。新部長の佐伯(トラウデン都仁)から、次期機体のアイビス号を飛ばすパイロットが2回生の由良冬子(吉谷彩子)に決まったことが明かされ、舞は尊敬する由良に「おめでとうございます」と称賛の拍手を送ったのだった。
「ここまで描かれてきた舞の性格から鑑みれば、パイロットが由良に決まったことを素直に受け入れ、心から祝福していることは明らかでしょう。ただ、スワン号で琵琶湖を飛んだ際に感じた『空を飛ぶことの楽しさ』は、すっかり舞を魅了。それまでは部員のためにスワン号を飛ばしたいという一心だった舞が、今度は自分のために空を飛びたいという夢を持つことになったのは明らかでした」(テレビ誌ライター)
舞は長崎・五島列島に転地療養した小3の夏、初めて飛行機に乗り、空を飛ぶことの楽しさに魅入られていた。浪花大学では飛行機作りに関わりたいという想いから航空工学を学んでいたが、スワン号でのパイロット経験を通じて、自分自身がパイロットとして飛びたいという気持ちに変わっていったのも無理のないことだろう。
作中では「飛行機への憧れはいつしか、空を飛ぶことへの憧れに変わっていました」とのナレーションも入り、舞は「パイロットという職業」という書籍を購入。その様子を見た先輩の由良から「航空学校」の存在も教わり、パイロットになる道筋を具体的にイメージするようになっていたのである。
航空学校の入試過去問も入手し、受験勉強をスタートした舞。ただ航空学校に通うにはせっかく入った浪花大学を中退する必要があり、学費も大学と同等以上にかかることから、両親にはなかなか言い出せない様子だ。
それに加えて航空ファンの視聴者からは、ストーリーの展開に直接影響する疑問も呈されていたのである。
「それは航空学校に入学する時期です。作中の『航空学校』が、その校名や校章から、独立行政法人の『航空大学校』をモチーフにしていることは明らか。ただ同校の受験資格では、大学に2年以上在学している必要があるのです。『2年修了見込み』でも受験はできるものの、舞が浪花大学の2回生を終えないことには航空学校に入学することはできない決まりとなっています」(飛行機に詳しいトラベルライター)
しかし舞はまだ1回生。航空学校に入学できるのは2回生が終わる翌年度末であり、まだ1年半も先のことだ。果たして今後、物語はどう進展していくのか。
その解決法は2つあるだろう。ひとつは「あくまでドラマ」ということで現実を無視し、1回生修了のタイミングで航空学校に入学すること。もう一つは2回生修了まで話を進ませたうえで、1年半後の入学を描くというものだ。
「この『舞いあがれ!』では様々な考証を厳密に行っているのが見どころの一つ。本作のファンとしてはきっちりと舞が2回生を修了する姿までを描いてほしいところでしょう。そうすれば先輩の由良がパイロットとして、イカロスコンテストに挑む場面も見られるはず。せっかくなら視聴者人気の高い由良の晴れ姿も見てみたいものです」(前出・テレビ誌ライター)
航空大学校では現時点で、入学時に入学料と授業料を100万円近く納める必要がある。さらには寮費と食費も月5万円ほどかかり、作中の2004年当時も金額的に大きな違いはなかったはずだ。
一方で舞の通っている浪花大学は旧・大阪府立大学がモデルの一つとなっており、当時の学費は年間50万円程度。舞が航空学校に入学した場合、岩倉家の家計負担が高まることは確実で、舞がアルバイトのシフトを増やしたのも納得だろう。
「舞はおそらく家に負担をかけないよう、航空学校の学費は自分で稼ぎたいはず。そうなると本来の入学時期である2回生修了時まで1年半の猶予があったほうが、物語もスムーズに進むかもしれませんね」(前出・テレビ誌ライター)
その1年半をじっくりと描いていくのか。それともなにわバードマンの3回生がナレーションだけであっさり退場したように、舞もすぐに航空学校に入学するのか。早くも次週・第7週の展開が楽しみになってきた視聴者も多いことだろう。