収容所にいたのはやはり「まもるちゃん」だった!ついに伏線が回収されることに【2022下半期BEST 9月編】

 2022年の下半期に人気を博した記事を振り返る本企画。NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」ではヒロインの比嘉暢子らが住んでいる沖縄の山原村に、まもるちゃんという謎の人物が暮らしていた。その正体がついに判明し、視聴者が納得していたようだ。

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 猫でもキジムナーでもなかった! 視聴者もそのセリフには納得していたことだろう。

 9月30日にNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」の最終回が放送され、数々のエピソードが消化不良に終わるなか、謎の人物「まもるちゃん」に関する伏線が回収されたとして話題になっている。

 最終回では比嘉家の三女・砂川歌子(上白石萌歌)が謎の発熱で入院。3日間超も熱が下がらず、医者もさじを投げている状況だった。長男の比嘉賢秀(竜星涼)も千葉から沖縄に駆けつけるなか、ヒロインで次女の青柳暢子(黒島結菜)は賢秀と長女の石川良子(川口春奈)を誘って、故郷やんばるの海へと向かったのだった。

 海のかなたにあるとされるニライカナイにいる亡き父親の賢三(大森南朋)向かって、「お父ちゃ~ん、歌子を助けてちょうだい!」と叫ぶ暢子たち。一緒に叫ぶように促されたタクシー運転手(ゴリ)は、賢三の墓を見舞いに来ていたまもるちゃん(松原正隆)を指さして「あの人やってないです」と指摘だ。

 すると賢秀は「ぽってかす! あれはまもるちゃん」と言いつつ、「母ちゃんと同じ収容所から一緒にこの村に来て…分かる?」と説明したのだった。

「この場面に多くの視聴者から《やっぱりあれはまもるちゃんだったのか!》と納得の声があがりました。7月20日放送の第73回では、戦後の民間人収容所にて戦火を生きのびた優子(仲間由紀恵/優希美青)が、のちに夫となる賢三(大森南朋/桜田通)と出会うシーンがハイライトに。その収容所に、チューリップハットが目印の人物が映りこんでいたのですが、その男性が共同売店で働いているまもるちゃんではないかと噂になっていたのです」(テレビ誌ライター)

 今回の描写により、第73回で張られた伏線が回収され、まもるちゃんと優子の関係性が判明。比嘉家の四兄弟が、ひと言も言葉を発しないまもるちゃんを怖がることもなく、当然の存在として受け入れていることも腑に落ちたことだろう。

収容所にいた若き日の優子(優希美青)はまもるちゃんとどういう関係だったのか。トップ画像ともに©NHK

 そのまもるちゃん、前日の第124回では暢子が作った沖縄そば定食を食べて「あぁ、マーサンやあ(美味しいなあ)」との感想を口にする場面も。全編を通して初めて言葉を発した姿に、いよいよまもるちゃんの正体が明かされるのかと期待を高めた向きも多かったはずだ。

 そして最終回では、優子と一緒に収容所にいたことが判明。本作の脚本を担当する羽原大介氏はまもるちゃんについて、「連続テレビ小説 ちむどんどん FANBOOK」(宝島社)にて「最終回まで観ていただければわかると思います」と語っていたが、その発言通りになった形だ。

 だが、その伏線回収を見届けたうえでもなお、視聴者には不満が残ったままだというのである。

「羽原氏はFANBOOKのなかで『まもるちゃんも何者なのかもわかりますので(笑)』と語っていました。しかし最終回で明かされたのは、彼が優子と一緒に収容所にいたという事実のみ。言葉を発しない理由も分からないままですし、収容所にいた大勢の民間人のなかでまもるちゃんだけが優子と一緒に山原村に来た理由も不明。結局、まもるちゃんが『何者』なのかは、まったく明かされないままに終わったのです」(前出・テレビ誌ライター)

 たとえば戦火の中を逃げ惑っていた優子を、まもるちゃんが身を挺して守った場面でも描いていれば、一緒に山原村に来た理由にもなるというもの。そうすれば「まもる」という名前にも意味を感じとれるというものだ。

 常に本を読んでいるという人物描写に関しても、戦前は真面目な学生だったという理由付けなどがあれば、視聴者も納得できたことだろう。しかしそういったディテールはまったく描かれず、「収容所にいた」という一点だけで「何者なのかもわかります」と自慢がられても、視聴者としては煙にまかれた思いではないだろうか。

「この『ちむどんどん』では各エピソードの話数配分が極端に偏っていました。それこそ暢子と和彦(宮沢氷魚)が結婚する際には、和彦の母・重子(鈴木保奈美)を説得する下りを延べ3週にもわたって展開。ここを半分にするだけでも、まもるちゃんをはじめとする主要な登場人物の人物像を深く掘り下げることができたはずです」(前出・テレビ誌ライター)

 ともあれ不満だらけの「ちむどんどん」にあっては、まもるちゃんが「収容所にいた」ことが分かっただけでも、まだマシなほうだと言えるのかもしれない。