昨年末に人気アイドルグループ「SUPER☆GiRLS」(スパガ)を卒業した石丸千賀が、新たな道を歩み出している。6月15日には役者として事務所所属になったことを発表し、7月7~11日にはヒロイン役で舞台「リライト」への出演が決まっている。
3歳で始めたバレエではロシアの「ボリショイ・バレエ・アカデミー」に留学するなど高いレベルで活躍。度重なる怪我と手術でバレエの道を断念するも、2018年にはSUPER☆GiRLSの4期生オーディションに合格し、アイドルへの道を踏み出した。
そしていま、新たな目標として役者や声優を目指すなか、彼女がもうひとつ興味を持っているのがアイドルの育成だという。現在メンバー募集を行っている新規アイドルプロジェクトに、石丸が振付師として参画するというのだ。
そのプロジェクトになぜ関わるようになったのか、そして表現者として今後どのような活動を行っていくのか。石丸千賀のこれから、そしてあまりにドラマチックだったこれまでの半生について本人の口から語ってもらった。
■合宿では全員分の歌とダンスをすべて把握していきました
――2018年、22歳でSUPER☆GiRLS(スパガ)に加入しました。
石丸 自分がそんなメジャーなグループに入れるとは思ってなかったです。アイドルに興味を持ちだしたのはロシアに留学していた中高生のころ。ロシアでは日本のアニメやアイドルが大人気で、私も現地で逆輸入する形で知りました。まだガラケーの時代だったからパソコンでアイドルの動画を観ていて、その時に「みらくるが止まンないっ!」に出会って、「なんだこの可愛さは!」と思って。そこから大好きになって、いつもカラオケで歌ってましたね。ほかには48グループさんも好きで、母にCDを送ってもらって、ロシアから総選挙に投票してたんです。
――ガールズグループが好きだったんですね。
石丸 女の子でメンバーが多いのが好きで、でんぱ組.incさんも寮のみんなで踊ったりしていました。やはり自分がバレエをやっているから、フォーメーションの構成を見てて楽しいグループにハマったんだと思います。
――そうやってスパガが好きになって、実際にオーディションを受けてみたと。
石丸 ロシア留学からの帰国後は音大のバレエ科に通い、卒業後にもう一度留学。そこから帰国したのちにオーディションを受けました。当時は就職活動もしていて、オーディションと並行して内定先の研修も受けていたので、合格してなかったら私、たぶんこの世界にいなかったと思います。
――22歳で遅咲きの合格。
石丸 ステージに立つことだけに生きがいを感じて生きてきたので、合格した時は本当に嬉しかったです。加入後は当時のマネージャーさんから、未経験の子たちと先輩を繋ぐ立場であってほしいと言われ、その役割を意識することに。加入してすぐ一週間の合宿があって、毎日のように曲を覚えていくんですけど、私は絶対に全曲を覚えていないとならない立場。自分の歌やダンスはもちろん、ほかの人の歌割りやフォーメーションも全部把握していったんです。今思えばがむしゃらに打ち込めたのはすごく良かったと思います。
――その全曲を覚える大変さと、ロシアのバレエ留学ではどっちが大変でした?
石丸 それはやっぱりバレエですね。ボリショイでは先生がよく「人間の限界に挑戦するからこその芸術」だとおっしゃっていて、バレエって言うならば終わりのない世界だから、そもそも正解がないんです。それに対してアイドルでは、自分の好きなアイドル像が明確にあって、それを目指していくという正解があるのでやりやすかった。ただ自分がなりたいアイドル像と、グループの中で求められるアイドル像には違いがありましたが。
――その違いを具体的に言うと?
石丸 自分としては中井りかさんや渡辺美優紀さんみたいなガッツリ可愛い系に憧れていたんです。でもグループに所属したら上から二番目の年齢で、MCもたくさん任せていただいて、これは「大人メンバー」としてシフトチェンジしなければなあ、と。私生活だとすごくアイドルっぽいって言われるんですけど、アイドルの現場だとしっかり者のお姉さんというギャップがありました。
■人生で初めて「何が分からないのかも分からない」という感情に
――昨年末に卒業した時点では、今後はどうしたいと思っていたんですか。
石丸 もともとアイドルになった時から声優や2.5次元に関わりたいと思っていて、グループ在籍時にもそういったオーディションを受けさせてもらって、3つくらい声優のお仕事をしたり、アニマックスさんでCMのナレーションを担当したりしました。お陰様でこのGWにはミュージカルでヒロインを務めさせていただく予定になっていて、残念ながらコロナ禍で延期になりましたけど、そういった機会を一つ一つ積み重ねていくというのが今年の目標です。
――7月には舞台「リライト」に出演します。
石丸 延期になったミュージカルと同じ制作会社さんの舞台に声をかけていただきました。こちらは歌やダンスがメインのミュージカルとは違って、いわゆる普通の舞台なんですが、演技に関していうと私、まったく経験がなくてゼロキャリアなんです。延期になったミュージカルの稽古期間には、人生で初めて「何が分からないのかも分からない」という感情になりました。バレエの時もアイドルでも経験がなく、頭を使い過ぎて空回りするってこういうことなのかって。そのなかで一カ月くらい積み重ねてきた過程を見てくださっていて、起用してもらえたのかなって思います。
――ゲームの声優も決まっているそうですね。
石丸 「戦乱のサムライキングダム」という作品で声優をやらせていただきました。あと夏か秋に「東京コンセプション」というスタイリッシュ妖怪RPGの新キャラクターも務めさせていただきます。だから今は舞台と声優の二本の軸で頑張っているところです。
――それらの活動に加えて、今後は新規アイドルグループにも関わっていくとか。
石丸 グループ時代にお世話になっていたスタッフさんが関わっているプロジェクトで、その方から「こんなグループを作るよ」ってURLが送られてきたんです。それを見て私から「振付やりたいです!」ってお願いしました。別に頼まれたわけでも、どうですかって訊かれたわけでもなく、私がビビッときて申し出た形です。
――もともと振付をやってみたいという興味はあったんですか?
石丸 先の話ですけど30歳くらいをめどにアイドルをプロデュースしたいなとは思っていて。作る側に回ることで、自分が得てきた経験を活かせるんじゃないかと。私はもともとアイドル好きだし、自分の実体験もあるし、自分で何かを作ると考えた時に、本心で出てきた言葉が「振付やりたいです」だったんです。
■やはり自分の好きなことに関わって生きていくのが一番
――バレエでは自分で振付を考えるものなんでしょうか。
石丸 クラシックバレエは古典的な要素が強いので振付が代々受け継がれるものなんですけど、コンテンポラリーはまた別。バレエ学校ってクラシックだけじゃなく、ジャズもやモダン、民族舞踊や宮廷舞踊も学ぶんです。しかも体操の授業まであって、バレエでは使わないバク宙も練習でやりました。
――バレリーナの方も引退後は自分のバレエ教室を持ったりしますよね。
石丸 みんな30代前半くらいまで踊って、そこから教室を作ったりします。私は大学の選択授業で育成指導法を学びましたし、当時から将来は教える側になりたいという気持ちがあったんだと思います。やはり自分の好きなことに関わって生きていくのが一番ですし、自分の好きな舞台、好きなアイドル、好きなアニメなど、いろんなことに片足を突っ込めている状況ってめちゃめちゃ幸せなことだと思います。
――夢が動き始めているという実感がありそうですね。
石丸 やっと動き始めたかなって感じです。これから手掛けるアイドルの振付では、本人たちの意見をすごく聞いていきたい。お客さんがどう受け取るのかというのが絶対に必要なものですし、その上で本人たちも納得できる形が一番熱が上がると思うので、メンバーたちの考えを取り入れながらやっていきたいですね。これから応募される方は、自分のなかのイメージを届けてもらえたら嬉しいです。
【新規アイドルグループ募集要項】
■主催 ワンリリー合同会社
■対象 15~22歳の女性
■その他
・特定のプロダクション、レコード会社、出版社と契約されていない方
・日本国内にお住まいの方に限らせていただきます
・関東近郊でのレッスン・活動が可能な方
・未成年の方の応募には保護者の同意が必要です
・経験不問
・強いメジャー志向がある方のみ
【募集期間】
2021年7月20日まで
【活動開始時期】
2021年夏予定
【応募方法】
ワンリリー合同会社の公式サイト内に用意された応募フォームから、必要事項を記入してエントリーしてください。書類選考の通過者のみご連絡いたします。応募から2週間連絡がない場合は不合格となります。合格者は、順次レッスンや弊社での活動をスタートいたします。
(撮影 Issey Nakanishi)