その見事な口説き方は、現代人にとっても大いに参考になるのかもしれない。
1月16日に放送されたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第2回では、源頼朝(大泉洋)が主人公の北条義時(小栗旬)に、いずれ挙兵する意思があることを伝えた。
湯河原で朝湯を共にした二人。姉の政子と良い仲にならんとする頼朝を警戒する義時は「出て行ってください、北条から」と思い切った言葉を投げ掛けるも、意を決した頼朝は「わしは北条の婿となり、北条を後ろ盾として、悲願を成就させる」と断言。その上で「お前だけには話しておく」と前置きしつつ、いずれ挙兵して京の都に攻め上り、平清盛の首を取ってこの世を正すと宣言したのだった。
そのためには政子と結婚して北条家の婿となり、後ろ盾にすると語った頼朝。ここで義時の肩に手を置き、「お前はわしの頼りになる弟じゃ」と、将来の義弟を口説いたのであった。
「義時はその後、鎌倉幕府を支える重要な立場に就くことに。そのきっかけが、この口説き文句にあったわけです。頼朝はなかなか本心を明かさず、機嫌もころころ変わる難しい人物ですが、ここぞという時に大事なことを明かすことにより、相手の心を動かす術に長けていたようです」(テレビ誌ライター)
そんな頼朝は今回、自らに好意を寄せる政子も見事に口説き落とすことに。そもそもは平家の敵として伊豆に流刑となり、伊東家に預けられていた頼朝。そこで伊東祐親の娘・八重(新垣結衣)との間に男子を設けたが、平家の威光を恐れる祐親はその男子を亡きものにしてしまっていた。
これで伊東家は自分の後ろ盾にならないと悟った頼朝は、政子の好意を受け入れる形で北条家に入らんと画策。そんな政子とのやり取りもまた、見事だったという。
政子と二人っきりになった頼朝は、あえて自分から「八重のことは存じておるか」と質問。八重を苦しめてしまったことから同じ過ちを繰り返したくないとして、「政子殿に八重のような思いをさせたくないのだ」と、一度は政子の好意を突き放すことに。しかしこれこそが頼朝流の駆け引き。頼朝の誠意に心を打たれた政子はそっと手を握り、「あの方の代わりは出来ません。でも私なりに、佐殿(すけどの)をお支えしとうございます」と答えたのである。
「これですっかり政子の心をつかんだ頼朝。平家に捕らえられるも流罪となって生き延びたことで『政子殿と知り合うこともできた』と語り、『生き永らえてよかったと、これほど深く感じたことはないぞ!』と、政子との出会いがいかに大切なものなのを最大級の表現で表してみせました。こうやって政子と義時の姉弟は、頼朝の殺し文句に篭絡されていったのです」(前出・テレビ誌ライター)
妹の実衣(宮澤エマ)に「やっと現れたのよ。私が一生を捧げたいと思う殿方が」と嬉しそうに明かしていた政子。男勝りと評判の女傑をあっさりと口説いてみせた頼朝のテクニックは、現代においても参考になりそうだ。