その企画、前にもどこかで見たような…。そんな既視感に襲われた視聴者も少なくなかったようだ。
6月1日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第38回では、ヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)がボーヤ(雑用係)として勤める東洋新聞社にて、大きな動きがあった。
暢子は前回、同社の若手記者である青柳和彦(宮沢氷魚)と偶然の再会を果たしていた。中三の時に和彦は、父親に同行して暢子の故郷である沖縄・山原村に3カ月間滞在。暢子ら比嘉家のきょうだいと仲良くなり、将来の再会を約束していた。
その和彦は今回、学芸部デスクの田良島甚内(山中崇)に「我が生涯最後の晩餐」という企画を書かせてほしいと直訴。なんでも著名人が人生最後に食べたい思い出の食について語る、東洋新聞きっての人気企画だという。そんな場面に既視感を抱いた視聴者が少なくなかったというのだ。
「新聞社が企画する食の特集といえば、傑作料理マンガの『美味しんぼ』に登場する《究極のメニュー》を思い出した人も多かったはず。究極のメニューは東西新聞社の文化部に勤める主人公の山岡士郎が、新人記者の栗田ゆう子とコンビを組んで始めた企画です。和彦には大野愛(飯豊まりえ)という同僚かつ彼女がおり、愛は和彦の取材に協力すると明言。このように『ちむどんどん』の設定は、まるで『美味しんぼ』の内容をトレースしているように思えてなりません」(テレビ誌ライター)
たしかに新聞社の社名も一文字しか違わず、男女コンビで食に関する企画に臨むところも一緒だ。ただ「美味しんぼ」では、山岡の実父である美食家の海原雄山が別の新聞社と組んで「至高のメニュー」という対抗企画をぶつけてくる流れが大きなテーマとなっている。
山岡は亡き母を巡って海原と絶縁関係にあり、それがストーリーにも大きく影響している。そうなるとさすがに「ちむどんどん」とは話がかなり違っていそうだが…。
「そちらの要素も巧みに織り込まれている気配があります。というのもヒロインの暢子は、勤めていた銀座のイタリア料理店『アッラ・フォンターナ』をクビ寸前となり、撤回の条件として東洋新聞社のボーヤをすることになりました。暢子にクビを宣告したオーナーの大城房子(原田美枝子)は、暢子の亡父である賢三(大森南朋)と何かしらの因縁がある様子。しかも、房子が暢子の大叔母である可能性を取りざたする声まであります。このように《料理対決》と《新聞社》に加え、《亡き親》や《血縁関係》など、両者に共通する要素は枚挙にいとまがありません」(前出・テレビ誌ライター)
いったい「ちむどんどん」の制作陣がどれくらい「美味しんぼ」を意識しているのかは不明だが、両者の設定に関連性があるとしたら、今後の展開に大きな影響を及ぼす可能性もあるという。
「それは男女関係です。『美味しんぼ』でタッグを組んだ山岡と栗田はのちに結婚し、三人の子供に恵まれます。そうなると『ちむどんどん』では和彦と愛が結婚することになるのか、それとも料理を縁として和彦と暢子が結婚するという可能性も考えられます。しかも亡父の因縁という条件まで考慮すると、暢子を選ぶほうが物語としての広がりがありそう。『美味しんぼ』では最終的に山岡が海原と和解しますが、その流れで言えば暢子が大城オーナーと深い関係を結ぶところまで想像できそうです」(前出・テレビ誌ライター)
なんとも気になる両作品の関係。ここはぜひ「美味しんぼ」を読んで予習しておきたいところだが、同作はコミックス111巻にも及ぶ長編のため、それもなかなか大変そうだ。