【ちむどんどん】賢秀のマルチ商法は違法なのか?意外に知られていない「ネズミ講」との違いとは

 賢秀に商才があれば、儲けられたのかもしれないのに…。そう思った視聴者もいたのではないだろうか。

 8月16日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第92回では、ヒロイン青柳暢子(黒島結菜)の兄・比嘉賢秀(竜星涼)が、またもや怪しげな商売を始めたことが明らかになった。

 横浜・鶴見で新婚生活を送る暢子を訪れた賢秀。結婚祝いとして渡されたのは「200万円(引きかえ券)」と手書きした紙切れだった。周りからは「こういうことか…」と呆れられていたが、賢秀には勝算があった。アメリカ製のビタミン剤「ジャイアントビタミン777(スリーセブン)」を販売するエージェント代行になったと自慢げに語り、その名刺も見せていたのである。

 賢秀の説明によると、まず入会金5万円を支払って会員になり、ビタミン剤の販売権を獲得。新しい会員を5人勧誘するとエージェント代行になれる仕組みだという。

 エージェント代行には、子会員が売った代金の3割が上納されることに。さらに孫会員の売上からも2割が上納され、会員が増えれば増えるほど本人の儲けが増えるというシステムだ。

「暢子はさっそく、沖縄で小学校教員を務める姉の良子(川口春奈)に連絡。良子は電話口で『ネズミ講? それつい最近取り締まる法律ができたマルチ商法のことでしょ?』と答えていました。二人は母親の優子(仲間由紀恵)が入会しないように気を付けようと誓いあったものの、良子が沖縄北部のやんばる地方に住む優子を訪ねると、すでにビタミン剤の段ボール箱が5箱も置かれていたのです」(テレビ誌ライター)

 長男に対して甘すぎる優子は案の定、賢秀の勧誘に応じていた様子。「賢秀が一生懸命やってるんだから応援してあげたいさあ」と語る優子に良子も呆れ顔だ。おそらくは優子自身が他の会員を勧誘する恐れはなさそうだが、賢秀のビジネスに加担したことには変わりはない。

 果たして賢秀のマルチ商法はどうなるのか。ほぼほぼ破綻するであろうことは目に見えているが、実は今回の物語では、ちょっとしたミスリードがあったという。

「ネズミ講とマルチ商法には似ている点が多いものの、異なる部分もあります。良子が口にしていた“取り締まる法律”とは、昭和54年(1979年)5月に施工された『無限連鎖講の防止に関する法律』(通称:ネズミ講禁止法)のことですが、この法律では必ずしも賢秀が手掛けているようなマルチ商法を規制できるとは限らないのです」(週刊誌記者)

 ネズミ講では会員権など実体のないものだけをやり取りするのに対し、マルチ商法では賢秀のビタミン剤のように具体的な商品を売るのが特徴。上納金のシステムは似たようなものだが、ネズミ講では子会員を勧誘しないことには本人に1円も入らないのに対して、マルチ商法では商品を売りさばくことで売上を稼ぐことが可能だ。

 マルチ商法とみなされる企業のなかには、会員の勧誘よりも商品の売り上げを重視するところも。売上高に応じて会員ランクが上がり、本社からの仕入れ価格が下がったり、ボーナスがもらえるといった仕組みがインセンティブになっているケースも少なくない。

自慢気にビタミン剤を披露する賢秀。トップ画像ともに©NHK

「もちろんマルチ商法が完全に合法なわけではなく、野放しにされているわけでもありません。悪質な場合には『特定商取引法』違反として摘発されることもありますし、子会員の勧誘がメインなのであれば、それこそネズミ講防止法の出番です。賢秀のビジネスでは合計で売上高の5割という上納金があまりにも高く、かなりネズミ講に近いのが怪しいところ。商品のビタミン剤自体も日本の法律に準拠しているのかが不明です」(前出・週刊誌記者)

 賢秀の場合、詐欺師の我那覇(田久保宗稔)が起点なのであれば、子会員としての3割上納は必須でも、孫会員としての2割上納は免れるはず。それなら7割は手元に残る計算なので、ビタミン剤の仕入れ価格さえ安ければ、本人の手八丁口八丁で稼ぐことも可能かもしれない。

 もっとも賢秀が稼いで成功、という物語でないことは確実。どこかの時点でダマされていることに気づいたり、もしくは賢秀自身が強引な子会員の勧誘で大トラブルに発展する恐れもある。ともあれ当の賢秀に、ネズミ講とマルチ商法の違いを理解する頭がないことは確実なようだ。