これは大変やで! そんな驚きの声があちこちから聞こえていたようだ。
11月2日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第23回では、ヒロイン岩倉舞(福原遥)の幼馴染である梅津貴司(赤楚衛二)が、ホームページを作成している姿が描かれた。その場面に関心や驚きの声が続出しているという。
舞の父親・浩太(高橋克典)が営む岩倉螺子製作所は、祖父の代から続く東大阪市の町工場。舞が小学生だったころは二人しかいなかった従業員が今では18人に増えており、第二工場も構える大規模な町工場へと発展していた。
浩太は飛行機に関わる仕事をしたいとの夢を持っており、人工衛星を作るプロジェクトにも参加したい構え。さらなる発展を願い、自ら考えた「小さなネジの、大きな夢」というスローガン(CI)をトップページに据えた公式ホームページを公開しようとしていた。
「2004年当時にはまだツイッターやフェイスブックも存在せず、町工場のような中小企業ではホームページを持っているところも少数派でした。浩太の会社ではシステムエンジニアとして働いている貴司にホームページの制作を依頼。貴司はHTMLを手打ちで書き換えながらページ制作に励んでいる様子でした」(IT系ライター)
その様子に視聴者からは<タグを自分で書いてるんだな><昔はこうやって作ってたよね>などと当時を懐かしむ声が続出。貴司自身も、浩太の妻・めぐみ(永作博美)からねぎらいの言葉を掛けられると「営業よりホームページ立ち上げるほうがずっと楽しいし」と答えており、自分一人でこつこつできる作業に喜びを見出している様子だ。
貴司が作っている公式ホームページはトップページにねじの写真が1枚だけ置かれ、要素として「TOP」「会社概要」「取扱商品」「お問い合わせ」の4項目を用意。基本的にBtoBの町工場ゆえにネットショップへの展開もなく、いたってシンプルなつくりだ。
だが一部の視聴者は、そんなホームページに書かれたとある文言に注目。なかでも町工場など中小企業の経営に関わる人たちからは<これは大変なことだ!>と驚きの声があがっていたというのである。
「ホームページには『株式会社IWAKURA』という社名が記載されていました。どうやら岩倉螺子製作所という古色蒼然とした社名から、21世紀っぽい名称に社名を変更したようです。かつて社名にはローマ字を使えなかったものの、2002年11月に法律が改正され、商号の登記に使えることに。そんな時代性もきっちり反映しつつも、この社名変更に驚きを隠せない視聴者が続出していました」(週刊誌記者)
社名を変更する場合には、膨大な量の作業が必要となる。届け出が必要なのは金融機関や取引先はもちろん、市役所や税務署から年金事務所や労働基準監督署といった公的機関、電力会社やNTTなど公共料金の支払先、工場機械のリース元など枚挙にいとまがない。取引先での登録名義と銀行口座の名義が違っていれば振込時に事故となる恐れもあり、実のところけっこうな大ごとだ。
これが大企業であれば取引先のほうで積極的に対応してくれるだろうし、合併で社名が変わるなど致し方のないケースもある。だがIWAKURAのような町工場では実際のところ、面倒くさがられるのがオチだ。そのリスクを負ってまで、浩太は社名変更を決断していたのである。
「この決断には『人工衛星や飛行機に関わりたい』という浩太の強い意志が感じられます。そういった分野に進出できれば、海外の取引先とやり取りする可能性も高まるというもの。その際には『IWAKURA RASHI SEISAKUJO』や『IWAKURA SCREW FACTORY』といった社名よりも、シンプルに『IWAKURA』と名乗ったほうが通りがよく、覚えてもらいやすいものです。英語表記なら会社のロゴも作りやすくなりますし、人材募集の際にも螺子製作所という古臭い社名よりも若者を惹きつけやすいでしょう」(前出・週刊誌記者)
浩太がIWAKURAという社名に込めた「小さなネジの、大きな夢」はやがて、人工衛星や飛行機の部品として、空高く舞いあがっていくに違いないだろう。