【舞いあがれ!】わずか3秒間の映像が示した、貴司が舞にだけ電話をした理由!

 その画面を見てやっと、電話をする気になったようだ。

 11月15日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第32回では、行方不明になっていた梅津貴司(赤楚衛二)が長崎・五島にいることが判明。幼馴染でヒロインの岩倉舞(福原遥)と望月久留美(山下美月)の二人が五島に向かい、貴司を発見したところで幕を閉じた。そこまでの経緯に、貴司の気持ちが丁寧に描かれていたという。

 小3からの幼馴染である舞、久留美、貴司。3人は古書店のデラシネを秘密のアジトとしていたが、高校を卒業してそれぞれの道に進んだ2015年の初春に、そのデラシネが閉店してしまう。これで貴司は唯一と言える心の拠り所を失ってしまっていた。

「貴司は高校卒業後、システムエンジニア(SE)として就職していました。本好きの彼は人と交わることなく機械を相手に仕事ができると考えてSEを選んだものの、実際のSEは営業がメインの仕事。会社から与えられたノルマを達成できない貴司は上司や先輩から叱責される毎日を送っていたのです」(テレビ誌ライター)

 作中では3人で会っているところに会社から電話が掛かってきたり、クリスマスの夜ですら先輩からの呼び出しが掛かる様子が描かれていた。その姿を見れば、視聴者のほうも貴司が「電話恐怖症」さながらの状態に陥っていたことに気付いたことだろう。

 小3の時に舞からもらった絵はがきの景色を見るために、五島の大瀬埼灯台に赴いていた貴司。電話を取りたくない彼は、携帯電話の電源を落としていた。ところが会社に退職届を出して失踪してから3日後、ついに貴司は舞に電話を掛けたのである。その理由がわずか3秒間の映像に込められていたという。

「3日ぶりに携帯電話の電源を入れた貴司。着信履歴には『おかん』『舞ちゃん』『久留美ちゃん』の名前が十数分おきに残されていました。失踪した貴司に電話してくれるのは、この3人だけ。もう会社や先輩から電話が掛かってくることはなく、自分を心配してくれるのは肉親と幼馴染だけであることが、3秒間だけ映し出された着信履歴に示されていたのです」(前出・テレビ誌ライター)

貴司が五島を訪れたのは必然性だった。何気ない場面でも伏線が回収されていた。トップ画像ともに©NHK

 母親に電話すればただ「帰ってこい」と言われることは分かっている。それでも自分が無事であることは伝えたい。その相手は舞でも久留美でもよかったが、五島に来た理由が舞のくれた絵はがきだったことから、舞に電話を掛けた。そんな貴司の逡巡すらも、着信履歴を見せられた後なら、視聴者にもビビッドに伝わっていたことだろう。

 五島にいると伝えただけで、自分が大瀬埼灯台にいると分かってくれた舞。舞と久留美の姿を見た貴司は、心から信頼できるのは世界中でこの二人だけだと、確信できたのではないだろうか。