【舞いあがれ!】薄型テレビが業績回復の起爆剤になるも、2年後にはまた取り引きを失う恐れが!

 ハッピーそうなエンディングの裏には、残酷な事実が見え隠れしていたようだ。

 1月18日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第74回では、ヒロインの岩倉舞(福原遥)が新たな部品の受注に成功しそうな場面で幕を閉じていた。だがその成功は決して、長続きするものではないという。

 家業である部品工場の株式会社IWAKURAにて、営業課の新米社員として働き始めた舞。リーマンショックの影響が続くなか、新規受注を得るために十数年来の取引先であるカワチ鋲螺を訪れていた。

 担当の森本(森本竜一)は急逝した前社長で父親の浩太(高橋克典)と旧知の仲。浩太と同じように「どんな小さい仕事でも構いません」と頭を下げる舞にほだされたのか、新しい仕事を打診してきたのだった。

「森本は薄型テレビに使うねじの見積もりを打診。『とりあえず図面見てもらえますか』と語っていたのは、かつて浩太に難しいねじの試作を依頼した時と同じような光景でした。しかも2009年当時は薄型テレビの市場が急拡大していた時期。どうやら舞は父・浩太のおかげで大きな新規案件をゲットできそうです」(テレビ誌ライター)

 視聴者からも<これは大口受注!><光が差してきたなあ>と喜びの声が続出。だが一方ではその喜びが、決して長く続くものでないとの指摘もあるという。

 テレビ市場を巡っては、2011年7月にアナログ放送が終了し、地上デジタル放送に完全移行。これに伴って数年前からテレビの買い替え需要が発生しており、2010年のサッカーW杯やバンクーバー冬季五輪も追い風となり、2009年には前年比58%増となる1362万台もの薄型テレビが出荷されていた。

 しかも翌2010年には出荷台数が2519万台へと大幅に成長。その薄型テレビに使うねじを受注できるとなれば、IWAKURAの業績向上に大幅に寄与するのは確実だろう。

2009年当時は画面周辺のベゼルが太いタイプの液晶テレビが主流だった。

 だが、そんなIWAKURAの栄華は決して長く続かないという。それは薄型テレビの出荷台数がどう推移したかを見れば明らかだというのだ。なぜなら2010年には早くも地デジ特需がピークアウトしていたのである。

 統計によると2011年には1982万台と、21%減の前年割れに。さらに2012年には645万台と、前年比で3分の1以下にまで落ち込んでいた。2013年以降は年間500万台ペースで推移。地デジ特需はわずか4年ほどで消え去ったのだった。

「ただでさえ需要が減ったうえに、薄型テレビの生産は中韓を中心としたアジアに移行。国内生産が激減したことから、IWAKURAのような東大阪の町工場にねじを発注するメーカー自体がほとんどなくなってしまいました。決して舞の責任ではないのですが、せっかく受注した『薄型テレビ用のネジ』という新規案件も、せいぜい2年程度しか業績に寄与しないのは時代の必然なのです」(週刊誌記者)

 一難去ってまた一難が待ち受けていることは確実なIWAKURA。果たして薄型テレビの次に同社の業績を支えてくれるのはどんな製品なのか。次こそは亡き父親の念願だった、飛行機用の部品に進出してもらいたいものだ。