【舞いあがれ!】細やかなセリフで示す山田事務員の心変わり…「奥さん」から「社長」へ

 たった一つの言葉で、心の変わりようまで描き出す。そんな脚本に視聴者が心底感心していたようだ。

 1月19日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第75回では、ヒロインの岩倉舞(福原遥)が営業で取ってきた仕事に、社員が一丸となってまい進する様子が描かれた。そんななか、舞に対して冷ややかだった事務員の山田(大浦千佳)が、急に態度を変えてきたという。

 舞の母親・めぐみ(永作博美)が社長を継いだ部品工場の株式会社IWAKURAは、夫で前社長の浩太(高橋克典)が急逝した影響もあり、業績が悪化。だが前回、営業課の新米社員となった舞が薄型テレビ向けねじの仕事をもらうことができ、社内は活気づいていた。

 試作には難航するも、かつて金銭的な理由から転職していた結城章(葵揚)が終業後に手伝ってくれることに。少しずつ試作も前進し、会議室で結城と社員たちがわいわいやっているなか、山田は夕食を買ってくるとめぐみに声を掛けていた。

「山田が『社長』と呼びかけるもめぐみはまったく気づかず、あらためて『社長ぉ!』と声をかけると、めぐみは『うん!?』と怪訝そうな顔で返事をしていました。このちょっとしたやり取りに視聴者からは《社長って呼んだ!》と驚きの声があがっていたのです」(テレビ誌ライター)

新規営業に成功した舞を、山田は認め始めたようだ。トップ画像ともに©NHK

 第70回でめぐみが正式に社長を引き継いで以来、山田がめぐみに直接話しかける場面はこれが初めて。他の社員たちとしゃべるときは常に、めぐみのことを「奥さん」と呼んでいたものだ。

 社員たちにとって「社長」はあくまで、前社長だった浩太のこと。山田はIWAKURAが経営危機に陥って以来、常々早く逃げ出したいと語っており、後継社長であるめぐみのことを社長とは認めていなかったのだろう。

「だが舞が結城を呼び戻し、めぐみもそれを受け入れたことで、山田の気持ちにも変化が生じた様子。結城は古株の笠巻(古舘寛治)に次ぐ古参で、ナイスガイぶりゆえ社員からの信望も厚かった人物です。その結城が『IWAKURAに恩返ししたい』といって試作品の設計を手伝ってくれる姿を見て、山田もめぐみ新社長のことを見直したのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)

 たった一言の「社長」というセリフに込められた、山田の変心。そんな細やかな脚本こそ「舞いあがれ!」らしさの表れではないだろうか。

 そうなると次に視聴者が期待するのは、山田が舞のことを何と呼ぶのかだ。これまで通りに「お嬢さん」と呼び続けるのか、それとも「岩倉さん」に変わるのか。営業課の先輩である藤沢(榎田貴斗)がすでに岩倉さんと呼んでいるなか、山田の変化に引き続き注目が集まることだろう。