【舞いあがれ!】貴司にパリの部屋を貸した八木、日本への強制送還もありえる?

 それはさすがにマズイのでは…。そう心配する視聴者もいたようだ。

 3月27日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第122回では、フランス・パリに旅立った梅津貴司(赤楚衛二)が現地に滞在している八木巌(又吉直樹)に再会。しばらく八木のアパートに滞在することになった。

 前回、パリに住む八木から「元気にしとるか?」との絵葉書を受け取った貴司は、八木に会いに行くことを決意。ヒロインで妻の舞(福原遥)も貴司のパリ行きを後押ししていた。絵葉書に書いてあった住所を訪ねると、ドアを開けた八木は「よう来たな」と歓迎。どうやら貴司がパリまで来ると確信していたのだろう。

 しばらく二人で歓談したあと、八木は「ほな、ちょっと行ってくるわ。ここにおってええで」と言い残して外出。ソファーで寝落ちしていた貴司が目覚めると、書き置きが残されていた。そこには「パリでしばらく暮らしたらええ」とあり、貴司は八木の部屋でパリ滞在を続けることになりそうだ。

「この展開は、かつて八木が古書店のデラシネを貴司に託したときとそっくり。ただ当時と異なるのは、デラシネは無期限で託したのに対し、貴司のパリ滞在には90日間という滞在期限があることです。さすがに不法滞在するわけにもいかないでしょうから、90日後の2020年4月までに貴司は妻と娘の待つ東大阪へと戻ることでしょう」(海外事情に詳しいトラベルライター)

貴司の詩集を持っていた八木。パリ・ジュンク堂書店で購入したのだろうか? トップ画像ともに©NHK

 それでは八木はどうするのか。貴司が帰国したであろう時期に、自分のアパルトマンに戻ってくるつもりなのか。そもそも彼はどういった資格でパリに滞在しているのだろうか?

「フランスには長期滞在を希望する外国人に向けた『ビジタービザ』という制度があり、最長で1年の滞在が可能です。退職後の夫婦がフランスでの生活を楽しむといった使い方ができるほか、最近では語学留学の学生に対してフランス当局が学生ビザではなくビジタービザでの滞在を推奨しています」(前出・トラベルライター)

 申請の際には1年間の生活費として1万7344.60ユーロ(約250万円)以上の残高証明が必要なほか、滞在期間をカバーする保険(約30万円)も求められる。果たして無職らしき八木にそれだけの資金があるかどうかは謎だが、実はそれよりも大きな問題があるというのだ。

「八木は自分が契約しているアパルトマンを、貴司にまた貸しする形となりました。これが契約違反なのは明らか。黙っていれば分からなそうなものですが、ビジタービザでの滞在者は転居をする場合、移民局への申請が必要となります。そうなると元の部屋を契約したまま転居するという不自然な状態となり、当局から目を付けられる恐れも。その場合、ビザ滞在の条件違反として、国外退去処分もあり得るでしょう」(前出・トラベルライター)

 貴司は詩人・金子光晴の自伝小説「ねむれ巴里」に刺激を受けていたようだが、金子がパリに滞在していたのは大正から昭和初期の話。現代とは条件が大きく異なり、外国人の滞在もはるかに容易だった。制作側が八木を金子になぞらえているのであれば、八木のパリ滞在は100年近くも前のファンタジーさながらなのかもしれない。