【カムカムエヴリバディ】甲斐性なしの五十嵐に、ひなたと結婚する「フラグ」が立った!?

 そのラストシーンには、未来への希望が込められていたに違いなさそうだ。

 3月7日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第88話では、ヒロインの大月ひなた(川栄李奈)が恋人の五十嵐文四郎(本郷奏多)の煮え切らない態度に、不満を抱える様子が描かれた。

 条映太秦映画村に就職し、2歳年上の大部屋俳優である五十嵐と恋仲になったひなた。いつしか月日も経ち、27歳になったひなたはいつでも結婚する気満々だが、当の五十嵐は「俺は侍でいたい」との強がりを捨てられず、ひなたに対して「俺は今は、まだ結婚できない」と宣言する有様だった。

 その五十嵐はかつて、映画「妖術七変化!隠れ里の決闘」に伊織という役名で出演したこともあったが、それ以降は役名のある役をもらうことができず。映画村の案内役やお化け屋敷の落ち武者といった仕事しかない大部屋俳優のまま。時代劇俳優として一本立ちできない現状では結婚に踏み切る気はないようだ。

「そんな煮え切らない五十嵐を、大部屋俳優の大先輩である伴虚無蔵(松重豊)は許せない様子。お化け屋敷で五十嵐から、なぜ約30年間も大部屋俳優で居続けられるのかと問われた虚無蔵は、『文四郎、傘張り浪人にて、刀を携えておる限り侍だ』と諭します。さらに『あべこべにいくら刀を振り回しておっても、愛しい女子を泣かすものは真の侍にあらず』と言葉を続け、『おひなを泣かすな』と五十嵐に忠告したのでした」(テレビ誌ライター)

 ここで「泣かせたらその時は」と言って刀を抜く仕草を見せた虚無蔵。すると五十嵐は刀に手を掛けることさえできず、道場での鍛錬を怠っているツケが表面化していたのである。

大部屋俳優から脱することのできないイライラを虚無蔵にぶつけていた五十嵐。ドラマ「カムカムエヴリバディ」公式ツイッター(@asadora_bk_nhk)より。

 そんな五十嵐が手にしたスポーツ紙には、五十嵐も挑戦したオーディションで左近役を勝ち取っていた武藤蘭丸(青木崇高)が、年末大型時代劇の主演に決定したとの見出しが。同じように無名の俳優だった武藤に差をつけられたという事実に、五十嵐はひなたとの待ち合わせも放り出して、撮影所の休憩室を後にしたのだった。

 仕事の終わったひなたが「ごめん文ちゃん! 遅うなってしもた」と言いながら休憩室に入るも、いるはずの五十嵐の姿はなし。「文ちゃ~ん」と探すひなたの姿には、視聴者も気の毒さを感じたことだろう。

 だがこの場面に、ひなたと五十嵐が結婚するであろう「フラグ」が立っていたという。それは休憩室のラジオから聴こえてきたヒット曲にあったというのだ。

「ここで流れていたのはKANの『愛は勝つ』。愛の強さをテーマにした曲で、サビでは『どんなに困難でくじけそうでも 信じることさ 必ず最後に愛は勝つ♪』と高らかに歌い上げます。この歌詞こそ、いま困難に面しているひなたと五十嵐が、お互いを信じることで結婚(愛は勝つ)に至ることを示唆しているのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)

8週連続オリコン1位の大ヒット曲だった「愛は勝つ」。若者は見たこともないであろう8センチCDで発売されていた。

 そんな歌詞に加えて、この場面であえて「愛は勝つ」を流したことにも意味があるという。

「同曲は1990年の発売で、1991年の日本レコード大賞受賞曲。KANは1991年末の紅白歌合戦に出場していました。つまり作中の1992年8月にはすでに過去の曲となっていたのです。この『カムカムエヴリバディ』ではラジオからその年を象徴する楽曲が流れてくることで“今は昭和〇〇年”という時代性を表すのが定番の手法。それをあえて前年のヒット曲を使ったことにより、この場面では時代性よりも歌詞の意味を強調したかった制作側の意図が示されたように思えてなりません」(前出・テレビ誌ライター)

 ひなたにとって「愛は勝つ」は、自分の秘めたる思いを代弁してくれる曲になっていたのかもしれない。