【カムカムエヴリバディ】ひなたと五十嵐の清々しい別れ、錠一郎が口にした「僕の友達」の真意とは

 父親が望んでいたのは、娘と彼氏の復縁ではなかったようだ。

 3月9日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第90話では、ヒロインの大月ひなた(川栄李奈)に別れを告げた元カレの大部屋俳優・五十嵐文四郎(本郷奏多)の元に、ひなたの父親である錠一郎(オダギリジョー)が訪れる場面が描かれた。

  大部屋俳優から脱することができない現実に打ちひしがれた五十嵐は前回、ひなたに対して役者を諦めると宣言。父親が経営する会社で働くべく、一緒に東京に行こうとひなたを誘ったが、役者の夢を追いかけてほしいというひなたの想いは変わらぬまま。「もう一緒にはいられない」と別れを告げた五十嵐は、その理由を「もう傷つけたくない、傷つけたくない」と語ったのだった。

 そして今回、自分の想いが五十嵐を苦しめていたとして、出社もできずに泣きひしがれているひなた。一方の五十嵐は長年お世話になった道場を雑巾がけしていた。そこに現れたのが、錠一郎だったのである。

「五十嵐は錠一郎から《責任を取れ》《一発殴らせろ》などと言われると覚悟していましたが、さにあらず。錠一郎は一枚のCDを取り出し、五十嵐に手渡しました。それはかつて関西を代表するトランぺッターとして活躍していたころ、最大のライバルだったトミー北沢の作品。ここで錠一郎はトミーのことを『僕の友達』と説明したのです」(テレビ誌ライター)

 そんなトミーのことを、錠一郎は「レコード出して、CD出して、アメリカにまで行って、僕の叶えられへんかった夢、全部叶えてる」と説明。それは逆説的に、夢を諦めた自分がるい(深津絵里)と結婚したことで幸せへの道を掴んだことを示していた。

 しかしその言葉は決して、五十嵐にひなたとの別れを翻意させるためのものではなかったのである。

「錠一郎は、夢破れた五十嵐が東京に帰る道を選んだことに、理解を示しに来たのです。トランペットを諦めたことで人生そのものを投げだそうとしていた錠一郎は、るいに命を救ってもらったことで第二の人生を歩み出しました。そして五十嵐は、父親が経営する会社で働くことにより、第二の人生を歩み始めようとしています。錠一郎はその決心を尊重し、自分の選んだ『ひなたの道』を歩けば人生は輝く、との言葉を贈ったのでした」(前出・テレビ誌ライター)

 最後、トミーのCDをはなむけに贈った錠一郎。その際に彼は、「僕の友達」だと説明したトミーについて「新譜出るたび買うてるけど、一回も聴いてない」と明かしていた。それはすなわち、トミーとは一度も再会していないことも示していたはずだ。

トミー北沢のCDは「innocent」(無垢)というタイトルだった。どらま「カムカムエヴリバディ」公式ツイッター(@asadora_bk_nhk)より。

「東京に戻った五十嵐が、ひなたと再び会うことはないでしょう。それでも長い人生において五十嵐とひなたが『恋人同士』だった事実は変わらず、その日々には楽しい思い出もたくさんあったはず。それゆえ錠一郎は、娘のひなたに楽しい日々を味わわせてくれた五十嵐への感謝を、トミーのCDに込めたのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)

 ひなたが「私の彼氏だった」という思い出を美しく抱きながらも、決して再会することはない。そんなキレイな別れ方を、錠一郎は父親として望んでいたのかもしれない。