【カムカムエヴリバディ】ひなたの英語シーンで分かった、大月家の帰省が1994年の夏だったワケ

 ひなたが出会ったのは、伝説的なアナウンサーだった!

 3月18日に放送されたNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第97話では、ヒロインの大月ひなた(川栄李奈)が、謎の老人男性から話しかけられる場面があった。

 叔父の算太(濱田岳)が亡くなったことをきっかけに、32年ぶりに父方の実家である雉真家に里帰りした母親のるい(深津絵里)に伴って、岡山を訪れた大月家一行。ひなたにとっては祖父の弟である大叔父の勇(目黒祐樹)に初めて出会う旅でもあった。

 雉真家では17歳で大阪に出ていったるいの部屋をそのままにしてあり、勇が姪のるいを大事に思っている様子が伝わってきた。その部屋でひなたは、押し入れの段ボール箱から古い英語教材を発見。それはるいと祖母の安子(上白石萌音)が使っていた「カムカム英語」の教材だったのである。

「例文に配給やGHQという単語が含まれている教材に、ひなたは『すごい時代を感じるわ』との感想を漏らしました。すると窓の外から老齢の男性が『英語のお勉強ですか?』と訊ねてきたのです。人懐こいひなたは突然の声掛けにも『いやあ、全然あきまへん』と正直に答え、二人はしばし英語談議に。すると男性は『みんな英語の赤ちゃんなんですから』と印象的な言葉を口にしていました」(テレビ誌ライター)

 するとコンセントが挿さっていないはずの古いラジオから、雑音交じりの音声が流れてきた。それは昭和天皇による玉音放送だったのである。突然の出来事に戸惑うひなた。すると音声は英語へと移り変わり、いつしか先ほどの老齢男性が英語の原稿を朗読しているスタジオにと、場面は移り変わっていたのである。

「その男性は、英語に翻訳された玉音放送を国際放送で朗読した、日本放送協会アナウンサーの平川唯一氏(演:さだまさし)だったのです。平川氏は終戦後の昭和21年から26年まで、NHKラジオ第一放送で流された『英語会話』を担当。童謡の『証城寺の狸囃子』に英語の歌詞を付けたテーマ曲の『Come, Come, Everybody』を手掛け、この歌は国民に広く愛されました。今回の第97話では赤ん坊だったるいを背負った安子が、ラジオから聴こえてくる同曲に耳を傾ける場面も。これぞ本ドラマ『カムカムエヴリバディ』のタイトルの由来となった曲だったのです」(前出・テレビ誌ライター)

るいは幼いころ、母の安子と一緒に「カムカム英語」を聴いていた。ドラマ「カムカムエヴリバディ」公式ツイッター(@asadora_bk_nhk)より。

 この回では神社に参拝したるいが、亡き父の稔と再会する場面もあった。出征したまま戦死し、お互いに顔を見たこともない父と娘だったが、終戦記念日のサイレンが鳴っている間、二人は再会することができていた。

 その一方でひなたが平川氏と出会うことになったのは、終戦記念日が理由ではないというのである。

「平川氏は1993年8月に91歳で亡くなりました。つまり物語中の1994年8月15日は、平川氏にとっての初盆だったのです。もし大月家がそれ以前に帰省していたら、存命中の平川氏がひなたと出会うという物語は成立しないはず。稔がるいに会いに来たのと同じ日に、平川氏が自身の関わった英語教材を読んでいるひなたに会いにくるためには、この日が1994年である必要があったのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)

平川氏を演じたさだまさしと川栄李奈。心なしか川栄がかしこまっているようにも見える。さだまさし公式インスタグラム(@sada_masashi)より。

 今週に入ってから次々と伏線が回収され始めている「カムカムエヴリバディ」。そもそものテーマだった英語に向けて一気に舵を切る予感を抱かせているなか、姪孫のひなたに英語を勉強してもらいたいがために、算太は1993年の暮れに病院を抜け出して大月家で看取られることを選んだのかもしれない。