彼女が本作に出演したのは、まさに必然だったのかもしれない。
3月25日に放送されたNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第102話では、ハリウッド映画の視察団として来日したアニー・ヒラカワ(森山良子)が、ヒロインの大月ひなた(川栄李奈)と長く話し込む場面がハイライトとなっていた。
前回101話の初登場時には、一部の視聴者から<アニーを演じているのって森山良子さんでは?>との噂も立っていたもの。今回はオープニングのクレジット表記に名前が記載され、まさに森山本人であることが明確に示された形だ。
歌手として高い知名度と人気を誇る森山は、女優としても連続ドラマで主役を務めるなど長い経験を持つ。しかも父親の森山久氏はアメリカ生まれの日系2世で、日本語より英語のほうが上手かったこともあり、娘の森山も幼少時から英語の発音を直されていたとか。それゆえ日系人のアニー役には74歳という年齢もあいまってピッタリだが、彼女がアニー役を務める背景にはさらに深い理由があるというのだ。
「父親の久氏はプロのジャズ奏者でトランぺッター。しかもトランペットを吹くようになったきっかけは、本作で重要な役割を果たすルイ・アームストロング(サッチモ)の演奏を生で聴いたからだそうです。戦後にも、来日したサッチモを自分の車で迎えに行ってホテルまで送るなど、日本人としては数少ない《サッチモと交流していた人物》であり、娘の森山も幼少時からサッチモをはじめとするアメリカの音楽に触れていました。本作ではジャズやサッチモ、トランペットなどが重要な役割を果たしていることもあり、日系アメリカ人のアニーを森山が演じるのはもはや必然だったと言えそうです」(音楽ライター)
そんな森山に加えて、ハリウッド視察団にはもう一人、本作の物語に関係してくる人物がいるという。それは視察団通訳のパトリシアを演じる米倉リエナだ。
その米倉はニューヨーク大学卒で、現在は女優業に加えてキャスティング・ディレクターとしても活躍。アニーと同じ仕事をしていることになる。しかも森山と同様に、彼女の親も本作に関わる仕事をしているという。
「米倉の母親は作詞家としても知られる奈良橋陽子氏。その奈良橋氏は2003年公開の『ラストサムライ』など、数々のハリウッド映画でキャスティング・ディレクターを務めたことでも知られています。本作ではいま『サムライベースボール』というハリウッド映画の制作が進んでいるという設定になっており、アニーはキャスティング・ディレクターとして日本国内でのオーディションなどを担当。これはまさに奈良橋氏が2000年代初頭に『ラストサムライ』で務めていた役割そのものなのです」(映画ライター)
その「ラストサムライ」には、東映で斬られ役として長年活躍してきた福本清三も出演。新政府軍の銃撃により戦死するという見事な散り際を見せていた。
その流れに沿うならば、本作で重要な役割を果たしている大部屋俳優の伴虚無蔵(松重豊)に、アニーが目をつけるという場面も期待されるところだ。