【カムカムエヴリバディ】最終回で怒涛の回収、桃太郎にとって甲子園は「鬼ヶ島」だった!?

 だから「ジョージ」だったのか! その名前に込められた意味に、視聴者も感心していたことだろう。

 NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」が4月8日に最終回を迎え、作中では2003年から2025年までの22年間がぎゅっと凝縮して描かれていた。そこでは登場人物がその後、どんな人生を送っていったのかが明かされ、その多すぎる情報量に視聴者も頭を整理しきれないようだ。

 ヒロインの大月ひなた(川栄李奈)は祖母のアニー・ヒラカワ(森山良子)こと安子の誘いを受け、30代後半で渡米。アメリカの大学で英語と映画について学び、ハリウッドのキャスティングディレクターとしてキャリアを築いていた。

 その後、帰国してNHKのラジオ英語講座で講師に就任。60歳を迎えた2025年となり、その英語講座で一緒に講師を務めていたウィリアム・ローレンス(城田優)が、実は小学生の時に一目惚れした外国人の少年・ビリーだったことに気づいたのである。未だ独身と思われるひなたが、ここから新たな春を始めさせる予感を感じさせていた。

 ひなたの母・るい(深津絵里)は、故郷の岡山にてジャズ喫茶「ディッパーマウス・ブルース」の経営を引き継ぐことに。同店はもともと、戦災孤児だった夫の錠一郎(オダギリジョー)を拾って育ててくれた柳沢定一(世良公則)が興した店だった。

 定一が亡くなった後はいったん閉店していたが、のちに息子の健一がひ孫の慎一(前野朋哉)とともに再興。健一が亡くなった後は慎一がトミー北沢(早乙女太一)の付き人となり、空いた店をるいと錠一郎の夫婦が継いだのだった。

 そしてるいの母・安子(上白石萌音)は、進駐軍将校のロバート・ローズウッドと共にアメリカに渡り、結婚して安子・ローズウッドとなっていた。その後、ワシントン州立大学で演劇を修め、「アニー・ヒラカワ」という名前でハリウッドのキャスティングディレクターとして活躍していた。

 ハリウッド映画「サムライベースボール」の仕事で来日した際、協業先の条映太秦映画村に勤めていた孫のひなたと知り合うことに。そこから様々な偶然を経て、ついに娘のるいと再会。誤解やわだかまりが解消されたのち、ひなたにアメリカ留学を勧めていた。その後、ひなたをアシスタントとして起用しつつ、ハリウッドの仕事を継続。引退後は亡夫ロバートの実家であるシアトルで隠居し、100歳の誕生日を迎えていたのであった。

2003年のクリスマスに感動の再会を果たし、母娘3代で語らっていたひなた・安子・るい。トップ画像ともに©NHK

 そんな母娘3代にわたる100年の物語が紡がれるなか、大月家にとってもう一人の家族であり、ひなたの弟である桃太郎はどうなったのだろうか。そこにはなんとも複雑に張られた伏線が隠されていたというのである。

「桃太郎は大学卒業後、大叔父の勇が経営する雉真繊維にて社会人野球の選手となっていました。そして安子とるいが再会した2003年のクリスマスのあと、安子の旧友だった“豆腐屋のきぬちゃん”こと水田きぬの孫・花菜(小野花梨)に出会い、一目惚れ。その場で『僕と付き合ってください』と速攻で告白し、翌年に結婚していたのです」(テレビ誌ライター)

 桃太郎と花菜は、京都で実家の「回転焼 大月」を継ぐことに。花菜が義母のるいから受け継いだ味を守り、桃太郎は母校・京都西陣高校の野球部監督になっていた。やがて二人の間には息子の剣が生まれ、その剣も京都西陣高校で野球をプレー。父の桃太郎が果たせなかった甲子園出場を成し遂げたのだった。

 その京都には、安子(アニー)の甥であるジョージが移住。日本文化に興味があり、野球が大好きだというジョージは、桃太郎が監督する野球部のコーチに就任していた。これで桃太郎、剣、ジョージの3人で甲子園出場を果たしたワケだが、その組み合わせに大きな意味があったというのだ。

ジョージから、日本に行って野球をやりたいとの手紙をもらっていた桃太郎一家。これが甲子園出場にと繋がっていた。©NHK

 最終回では終始、ひなたによる英語のナレーションが入っていたが、甲子園出場を語る場面ではジョージのことを「キュリアス・ジョージ」と説明していた。このキュリアス(Curious)には風変りや奇妙といった意味があり、ハリウッドの仕事をなげうって日本で高校野球のコーチになったジョージのことを風刺した表現になっていたが、実はもう一つの意味が。それは、NHKでも放送していたアメリカのアニメ「キュリアス・ジョージ」にかけたものだというものだ。

「同アニメの主人公は『おさるのジョージ』で、ジョージを猿に例えた形でした。そして監督は桃太郎で、選手の剣は『けん=犬』。すなわち桃太郎、犬、猿という組み合わせで、甲子園という鬼ヶ島に行ったというおとぎ話になっていたのです。そしてもう一匹の雉については、ひなたが『雉真製のユニフォームを着て』と説明。よもや雉真という苗字はこの大オチに向けた壮大な伏線だったのか? と驚かされましたね」(前出・テレビ誌ライター)

 桃太郎と剣の親子はいずれも、時代劇俳優・桃山剣之介にあやかって命名されたもの。桃太郎は小学生の時に「剣太郎が良かった」とコボしていたものだが、ここで桃太郎伝説に繋げるためにはどうしても、桃太郎が先に生まれている必要があったのかもしれない。

 そして桃太郎と言えば、人気時代劇の「桃太郎侍」を思い出す人も多いはず。同作を制作していたのは「カムカムエヴリバディ」ひなた編の舞台である条映のモチーフとなった東映だ。しかも1967年~1968年に放送されていたテレビ第二弾で主役を務めていた四代目尾上菊之助は、「カムカムエヴリバディ」で桃山剣之介を演じた尾上菊之助(五代目)の父親なのである。

 このように、あまりにも複雑に絡み合った伏線が回収されまくった最終回。現実とさえ巧妙にリンクするその設定には、最後まで視聴者も驚かされっぱなしだったことだろう。