その歌声をもう一度聴くことはできるのだろうか。視聴者も不安に駆られていたようだ。
4月15日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第5回では、比嘉家の父親・賢三(大森南朋)が、自宅で三線を手に沖縄民謡の「てぃんぐさぬ花」を歌う場面があった。
てぃんぐさとはホウセンカ(鳳仙花)のこと。ホウセンカの花や葉は古来から染色に使われており、この民謡ではマニキュアのように爪に色を付けて遊ぶさまが歌われている。
「ホウセンカで染めた爪はなかなか色が落ちないことから、この歌では《親からの教えも心に染まって落ちることはない》と、親の大切さや感謝の意味が込められています。地元の沖縄では幼稚園や保育園でも歌われており、ほぼ誰でも口ずさむことができる県民歌と言える民謡です」(沖縄マニアのライター)
番組では「てぃんさぐぬ花は爪先に染みてぃ 親ぬ寄し事や肝に染みり」という歌詞に、<てぃんさぐの花は爪先に染めて遊び 親からの教えは心に染めて歩め>という説明を付けていた。ここでも肝(ちむ)という言葉が使われており、沖縄人にとって“ちむ”という概念が身近であることも示されている。
その前の場面では、すやすやと寝ているヒロイン暢子(稲垣来泉)ら4きょうだいの寝顔を見ながら、「子供は不思議だな。何でもしてやりたいのに、肝心のことは何にもしてやれない」とつぶやいていた賢三。妻の優子(仲間由紀恵)も「うちの親はどんなしてたかねえ。いまのうちを見たら何て言うかね…」と返していた。
「比嘉家はこの日の昼、大学教授・青柳史彦(戸次重幸)の招待で、那覇のレストランで洋食ディナーを食べていました。そこで長男の賢秀からズック、長女の良子から体操着をねだられた賢三は『分かった分かった、買ってあげるから』と安請け合い。しかし家の新築やサトウキビ畑の購入で借金を抱える比嘉家ゆえ、賢三は農業の合間を縫って那覇に出稼ぎに出ることにしたのです」(テレビ誌ライター)
その夜に子供たちのことを想い、親から子への想いを民謡に載せて歌っていた賢三。彼の胸に去来する想いはどんなものだったのか。
そんな賢三の姿に、視聴者からは<もう一度、てぃんぐさぬ花を歌ってほしい>といった悲痛な声が漏れ出ることに。出稼ぎを前に子供たちへの想いを歌う賢三には、なにかしら将来への不安を感じさせる雰囲気が漂っていたのであった。
だが視聴者の不安は、終盤で農作業中の賢三が倒れてしまったことで現実のものに。もはや賢三の元気な姿を見ることはできないのだろうか。そして暢子たち4きょうだいの運命はどうなるのか。
「ラストシーンの後には『これからのちむどんどん』という次週予告のコーナーが続き、成長して女子高生になった暢子の姿も映りました。気になるのはこの予告編に賢三の姿がなかったこと。ただ第二週向けに更新された公式サイトの《登場人物》欄には賢三の姿もありました。説明文では体調については触れられていませんが、せめて病気で入院した程度であってほしいところです」(前出・テレビ誌ライター)
次週にはいよいよヒロインの黒島結菜が登場しそうな「ちむどんどん」。暢子ら4きょうだいが健やかに育っていることを、視聴者も親目線で願っていることだろう。