その場での思い付きのように見えて、じつは深い策略だったのかもしれない。
5月10日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第22回では、音楽教師の下地響子(片桐はいり)が比嘉賢秀(竜星涼)の家を訪れる場面があった。
前回、ハンバーガー店で賢秀が大暴れし、騒動に巻き込まれていた下地先生。足を「複雑打撲」したと言い張る彼女は、同店でのミニコンサートが台無しにされた恨みを賢秀にぶつけるべく、「神聖な音楽が汚された」「告訴する!」と息巻いていた。
警察官の案内で比嘉家を訪れた下地先生。すると高校の教え子で、賢秀の妹である歌子(上白石萌歌)を見つけ、「あの男、比嘉歌子の!?」と驚いた様子だ。ずかずかと比嘉家に上がりこんだ下地先生は「音楽への罪は音楽で償ってもらいましょう」と宣言し、歌子がここで歌ったら今回のことは水に流すと明言したのだった。
「前々から歌子が秘めた歌の実力に魅入られていた下地先生。学校では内気な歌子に逃げられてばかりでしたが、今回ばかりは歌子も覚悟を決めて『椰子の実』を歌いあげました。その歌声は清らかかつ伸びやか。目を閉じて聴きほれていた下地先生は、『いま分かった、あなたの才能を花開かせるために私は音楽教師になった』と言って、満足そうに帰って行ったのでした」(テレビ誌ライター)
この一件、賢秀と歌子が兄妹であることから丸く収まる形となった。その一方で、下地先生にはもともと、二人が兄妹であることを知っていたのではとの疑惑もささやかれているというのある。
「そもそも本当に告訴したいのであれば、わざわざ賢秀の家に出向く必要はないはず。神聖な音楽の場を汚されたことに憤っている下地先生ゆえ、賠償金をせびりに行ったとも考えづらいところです。一方で歌子が自分から逃げ回っていることも知っているので、最初から歌子目当てで比嘉家に訪れるのも避けたいところでしょう。そのため警察官に案内させたうえで、その警察官の前でわざと『あの男、比嘉歌子の!?』と口にすることで、あくまで歌子と偶然に出会ったことをアピールしたのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)
そもそも「足を複雑打撲した」という嘘からして、いかにも不自然なところ。歌子に歌ってもらうための方便だったのであれば、目的を達成した帰り道にスタスタと歩いていったのも納得ではないだろうか。