【ちむどんどん】「もうやめなさい!」母親の優子が初めて怒った理由とは?

 あの温厚な母親が声を荒げた! その場面に驚いた視聴者も少なくなかったようだ。

 5月11日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第23回では、ヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)が高校を卒業した春休みに、東京に遊びに行きたいと頼み込む場面があった。

 地元・沖縄の内間食品に内定が決まっている暢子だが、本心では卒業後に東京に行き、レストランのコックになりたいと考えていた。すると親友の前田早苗(高田夏帆)のもとに、東京の大学に合格したとの報せが届くことに。料理部の後輩たちと一緒に「東京! 東京!」と歓喜する姿に、暢子はジェラシーを感じている様子だった。

 比嘉家で食事当番を務める暢子はその晩、夕飯にボロボロジューシー(雑炊)を作るものの、調理中も心ここにあらずの様子。味付けが薄かったようで、姉の良子(川口春奈)からは「最近、ボーっとしていない?」と心配される有様だ。

「すでに小学校教員として働いている良子は『分かってる? 4月から社会人』と暢子に忠告。暢子が母親の優子(仲間由紀恵)に『社会人になる前に春休み、東京に遊びに行きたい』との希望を明かすと、良子は『春休みは今年も名護の工場でアルバイト』と、暢子のことを諭したのです」(テレビ誌ライター)

 東京に行くお金がどこにあると、呆れ顔の良子。暢子はこの先、ずっと働くことになるのだから、最後の春休みくらいは羽を伸ばしたいと反論だ。すると良子は「社会人は毎日働いて当たり前! ウチもお母ちゃんも一緒でしょ」と、社会人の先輩として厳しい態度をぶつけたのである。

 そんな指摘に暢子は「最後の春休みくらい、楽しい思い出を作りたいわけさ!」と反発。小学生のころから家族のご飯を作ってきたと主張したが、良子も負けじと、家の仕事を手伝っているのは暢子だけではないと言い返していた。

「すると暢子はキレてしまったのか、『ウチのご飯食べないで!』と、良子の食器を取り上げてしまいました。良子は『何なワケ? 返して!』と言いながら、暢子と食器の取り合いを始めることに。二人が意地を張り合うなか、ついに母親の優子が『もうやめなさい!』と大声で二人を叱ったのです」(前出・テレビ誌ライター)

東京に行きたい暢子と、いつでも子供ファーストの優子。トップ画像ともに©NHK

 この場面に視聴者からは<お母さん、怒れるんだ!?><娘のことは叱るんだな>といった声が続出。これまで優子が怒る場面がなかったことに加えて、家族にさんざん迷惑をかけてきた長男の賢秀(竜星涼)に対してまったく怒ることなく、常に優しい態度を見せてきたことへの疑問が、ここで反映される形となったのである。

 その賢秀は為替詐欺に遭い、960ドルもの大金を持ち逃げされることに。ただでさえ500ドルの借金を抱えていた比嘉家に、さらなる借金を強いることとなっていた。しかし当の賢秀は一切悪びれることなく、反発する妹たちに「俺は悪くない」の一点張り。暢子や良子たちが「ニーニー!」と怒りを露わにしても、なぜか母親の優子は常に賢秀をかばい続けていた。

 しかも何を思ったのか賢秀は「部にして返す!」(※部は倍の誤り)との書き置きを残して出奔。家に便りも寄せず、どこに何をしているか分からない始末だが、優子はそんな無責任な態度に怒ることもなく、賢秀のことを心配している様子だった。

「今回も暢子と良子に対して大声を出したとはいえ、それはあくまで食器の引っ張り合いをやめさせるための手段だったはず。実際、その後に暢子や良子を叱ることはありませんでした。さらには自分の給料を前借りした300ドルを借金相手の叔父に差し出して、暢子の東京行きを認めてほしいと頭を下げていたのです」(前出・テレビ誌ライター)

 そんな優子の行き過ぎた自己犠牲精神は、決して比嘉家のためにはなっていないとの指摘もある。しかし彼女が怒ることなく子供たちのことを第一に考えているからこそ、比嘉家は借金を抱えつつも幸せに暮らせていられるのかもしれない。