その場面にはさすがに不快感を抱く視聴者も少なくなかったようだ。
5月17日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第27回では、上京したヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)が横浜の鶴見で、沖縄県人会の絆に救われる場面があった。
行方不明になった長男の賢秀(竜星涼)を探すべく、よく飲みに来ていたという鶴見をさまよう暢子。しかし土地勘もなく、酔っ払いに絡まれたこともあり、当て所もなく住宅街の路地をとぼとぼ歩くだけだった。
すると「平良」の表札を揚げた家から、三線の音が聞こえてきた。そのメロディは亡き父の賢三(大森南朋)もよく歌っていた沖縄民謡の「てぃんさぐぬ花」だ。ここで持ち前の人懐っこさを発揮した暢子は「初めまして、比嘉暢子と言います。今日の朝、東京に着きました」と平良家に助けを求めたのだった。
「そこは沖縄県人会の会長を務める平良三郎(片岡鶴太郎)の家でした。困っているウチナンチュー(沖縄人)を見ると放っておけないという世話好きの三郎は、妻の多江(長野里美)と共に暢子に一宿一飯を与えるばかりか、翌日には就職の世話まですることに。上京初日から暢子は、ラッキーな出会いに恵まれたのでした」(テレビ誌ライター)
これらの場面では、ヒロイン暢子が持つ人を惹きつける魅力や、沖縄県人会ならではの助け合いの精神が描かれていた。それらは今後も本作を彩る要素となりそうだが、一方で暢子の描き方を巡っては女性視聴者を中心に批判の声も寄せられていたというのである。
なかでも大きなブーイングがあがっていたのは、前日の第26回で暢子が酔客らに絡まれた場面だという。沖縄から出たきたばかりの暢子は酔っぱらったサラリーマン二人に絡まれたうえに、タンクトップ姿で巨漢の男性から「どうしたの?」と迫られ、恐怖の表情がアップで映し出されていた。
「巨漢男性から逃げればサラリーマンらが待ち受けているという状況は、二頭の猛獣に挟まれて絶体絶命の草食動物さながら。女性にとってはもはや恐怖の場面でしかなく、同じような体験を持つ女性であればトラウマが蘇ったかもしれません。ところがこのシーンには愉快な曲調のBGMが流れており、制作側がコミカルな場面として描いていることは明らかです。そんな姿勢に女性視聴者から《おじさんの視点!》との猛批判が浴びせられたのも当然でしょう」(女性誌ライター)
田舎から出てきたばかりの18歳女性にとって、この状況がどれほど過酷なものか。暢子にとっては身の危険を感じて当然の場面だが、制作側の男性陣は単なるドタバタ劇を描いただけなのかもしれない。そんな調子で暢子の成長物語に深みが出るのかと、心配でしょうがない視聴者も少なくないことだろう。