もしかしたら視聴者には分からない壮大な裏設定でもあるのだろうか?
5月24日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第32回では、沖縄の山原村からヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)を追うように上京した砂川智(前田公輝)が、横浜・鶴見で歓迎される様子が描かれた。
食品卸の店に住み込みで働けるようになったという智。レストランの仕事で心身ともにすり減っていた暢子は、幼馴染の智も上京してきたことに大喜びだ。暢子が下宿している沖縄料理屋の「あまゆ」では、沖縄県人会の面々が泡盛で乾杯し、智を歓迎していた。
智は東京に来る前に、大阪で一週間働いてきたと説明。朝から晩まで工場での廃液運びという肉体労働だったが、「それでも東京に行きたかったから、じぇったい負けるかってからに歯ぁ食いしばって頑張ったわけよ!」と胸を張っていた。その言葉に県人会のウチナンチューたちは大いに盛り上がっていたが、視聴者からは疑問の声が噴出していたという。
「智はまず大阪で働いたことについて『大阪までの汽車賃しか持ってなくて』と説明していました。しかし、沖縄から本土に来るには汽車でなく船に乗るはず。それなのになぜ“汽車賃”という言葉が出てきたのか、まったく理解不能です。よもや“船賃”と間違えたのであれば、沖縄を描くドラマとしてはあまりにもみっともないミスと言わざるをえませんね」(テレビ誌ライター)
ただ、智の説明はあくまで言葉足らずであり、「大阪までの汽車賃」という説明は決して間違っていないとの見方もあるという。
沖縄からの船便には遠い順に東京、大阪(神戸)、そして鹿児島という3通りがあった。もちろん東京行きの船賃が最も高く、順に安くなっていく。それゆえ智は最も安く行ける鹿児島まで船で行き、そこから汽車で東京を目指したものの、「大阪までの汽車賃」しか持っていなかったという理屈だ。
「それはさすがに有り得ないでしょう。昭和47年当時、沖縄から東京への船賃は片道二等で7900円ほど、そして鹿児島へは5000円ほどでした。一方、鹿児島から大阪までの鉄道運賃は普通運賃だけでも3000円ほど。つまり《沖縄→鹿児島→大阪》は《沖縄→東京》よりも高くついていたのです。それなら船で東京に直行するほうが安く済みますよね」(トラベルライター)
もし智が「大阪までの“船賃”しか持ってなくて」と言ったのであれば問題はなかった。それがなぜ“汽車賃”になってしまったのか。なにかと不思議な設定がまかり通る「ちむどんどん」だが、今回もその謎設定で視聴者を煙に巻いてしまったようだ。