【ちむどんどん】暢子がイカスミパスタを発明?制作陣はイタリア料理のことをまったく知らなかった!

 それ、順番が逆なんだけど…。もはや視聴者も呆れかえっているようだ。

 6月17日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第50回では、ヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)が自作の「イカスミパスタ」を試食してもらうシーンが描かれた。

 東京・銀座のイタリア料理店「アッラ・フォンターナ」に勤める暢子は、オーナーの大城房子(原田美枝子)から、メインとなる新しいメニューの提案という課題を与えられていた。それに合格したら、メイン料理を担当する花形ポジションの“ストーブ前”を一カ月任せてもらえるという、重要なテストだ。

 試行錯誤の末に暢子が完成させたのは「イカスミパスタ」。出身地・沖縄の郷土料理であるイカスミジューシーにヒントを得たもので、沖縄ではよもぎを使うが、今回のパスタでは代わりにパセリを使用。出汁はアサリで取ったという。暢子は「まさか沖縄の料理がイタリア料理に応用できるなんてビックリです」と、自分のアイデアを自画自賛していた。

 オーナーと料理長の二ツ橋シェフ(髙嶋政伸)、そして従業員一同で暢子の作ったイカスミパスタを試食すると、従業員からは「うめぇ!」と驚きの声が。険しい顔を見せていた二ツ橋も「たしかに見た目はよくない、真っ黒で食べたら歯も歯茎も黒くなる」と前置きしつつ、「見た目と正反対の純粋で濃厚な旨味が…深い!」と感心した様子を見せていたのである。

「オーナーが『改良してメニューに加えましょう』と評したことで、暢子は見事試験に合格。2週間後から念願の“ストーブ前”を担当することになりました。これでめでたしめでたしと言いたいところですが、視聴者のあいだからは暢子が作ったイカスミパスタに対して疑問の声が噴出していたのです」(テレビ誌ライター)

定番イタリア料理のイカスミパスタは、日本人にも人気の高い観光地・ヴェネチアの名物料理だ。

 今回のイカスミパスタは、暢子が沖縄料理にインスパイアされて考案したオリジナルメニューとなっている。料理長の二ツ橋は当初「見た目が、この店のメニューにはふさわしくないと思います」と評しており、イカスミを使った料理は初めて目にした様子だった。

 広い見識を持つ大城オーナーも、沖縄二世ゆえにイカスミジューシーのことは知っていたが、イカスミパスタについては暢子の工夫を認めていた様子。しかしそもそもイタリア料理には昔から「イカスミパスタ」があったのである。

 イカスミパスタはイタリア語で「パスタ・アル・ネーロ・ディ・セッピア」(Pasta al nero di seppia)と呼ばれ、ネーロが黒、セッピアがイカ(コウイカ)の意味。これは水の都・ヴェネチアの名物料理として知られており、パセリやアサリの出汁を使うのもヴェネチア風だ。

 ヴェネチア(ヴェネト州)ではほかにもイカスミのリゾットや、イカをまるごとイカスミソースで煮た料理も名物となっている。このようにイタリア料理においてイカスミを使った料理は定番であり、料理長の二ツ橋がイカスミパスタの見た目に否定的だったのは、そもそもおかしな話なのである。

 それをなぜ、まるで暢子がイカスミパスタを“発明”したような話になっていたのか。その理由は意外にも、本作の制作陣にあったという。脚本を手掛ける羽原大介氏は公式ムック「NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説ちむどんどん Part.1」の座談会において、「ここで白状しますと、僕たちおじさん3人は料理の知識が全くないんです」と明かしていたのだ。

このガイドブックに収録された「スペシャルゆんたく」(座談会)に、料理の知識がないとの告白が掲載されている。

「その3人とは脚本家、制作統括、そしてチーフ演出という主要スタッフのこと。彼らが料理のことをまったく知らないため、イタリア料理の定番メニューすら、暢子が自ら考案したかのような展開になったのでしょう。現場にはイタリア料理監修のスタッフもいるのですが、脚本に口を出すという権限外のことは控えていたのかもしれません」(前出・テレビ誌ライター)

 この調子では今後も、暢子が伝統的なイタリア料理を「発明」してくれるのかもしれない?