【ちむどんどん】オート三輪に4人乗れない問題!海シーンに見る「カムカム」との格差とは

 どうやら設定の不備は、「そのシーンを描かない」ことで解決していたのかもしれない。

 7月8日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第65回では、東洋新聞記者の大野愛(飯豊まりえ)が、ヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)らを海に誘い、若者4人が波打ち際ではしゃぐ姿が描かれた。その場面を巡って視聴者からは「作中に描かれなかったシーン」への疑問が続出していたという。

 愛は東洋新聞の大型連載企画に向けて発案した「女性の時代」をブラッシュアップすべく、同僚で恋人の青柳和彦(宮沢氷魚)や暢子、食品卸会社を経営する砂川智(前田公輝)らに協力を依頼。それぞれの視点からアイデアを出し合ってもらい、一晩かけて企画に取り組んでいた。

 夜が明け、ついに企画書を完成させた愛。すると彼女は寝ぼけまなこの3人に声を掛けて、「ねえ、今から海に行かない?」と誘っていた。場面が切り変わると4人はすでに海岸で遊んでいたが、この流れに疑問を抱く人も多かったようだ。

「愛は智に『車、出して!』と頼んでおり、普通なら海に向かう車中で若者4人がハシャいでいる姿を映し出すところでしょう。しかし智の車は配達用のオート三輪で、キャビンには3人掛けのベンチシートしかないので、一体どうやって海に行けたのかが謎なのです。架台に一人乗ったのであれば、それは明らかな法律違反なので、さすがにそんな場面は描けないはず。そもそも『智の車に乗って4人で海に行く』という設定自体に無理があるため、海への移動シーンを描くことができなかったのではないでしょうか」(テレビ誌ライター)

上京してから初めての海にハシャぐ暢子と友人たち。ここにどうやって来たのかは描かれなかった。トップ画像ともに©NHK

 本作ではこれまでにも時代考証を無視した描写や、詰めの甘さが数多く指摘されていたもの。そもそも昭和53年(1978年)に横浜で自分の会社を興した智が、配達用にオート三輪を導入した時点ですでに話に無理があるというものだ。

 そんな海の場面を巡って、朝ドラファンの間からは<前作との差が大きすぎる>との声もあがっていたという。

 前作の「カムカムエヴリバディ」は練りに練った設定や、緻密に張り巡らされた伏線の巧みさで、視聴者を魅了していたもの。その「カムカム」では第50話にて、ヒロインの雉真るい(深津絵里)ら若者4人が海に向かうシーンがあった。それと今回の「ちむどんどん」にはどんな差があったのだろうか。

「その差はずばり、車です。『カムカム』ではトミー北沢(早乙女太一)の駆るオープンカーの『カルマンギア タイプ1 カブリオレ』で海までドライブ。海岸沿いの道を走るシーンを空撮を交えて効果的に取り入れ、《海に遊びに行く若者たち》を盛り上げていました。トミーが外車に乗っていたのは、彼が裕福な家の息子であることの表れ。それは、るいの恋人で戦災孤児である大月錠一郎(オダギリジョー)との格差を象徴するアイテムにもなっていたのです」(前出・テレビ誌ライター)

 作中に登場する車1台にしても、なぜその車種なのかという必然性があった「カムカム」。それに対してオート三輪を持ち出した理由が判然とせず、そのせいで海に向かう車中シーンを撮れなかった「ちむどんどん」。

 そんな両作品の格差は、今後もさらに広がっていくのか。朝ドラファンとしては「ちむどんどん」の奮起に期待したいところだろう。