話の流れとして唐突すぎるエピソードの裏には、ちょっとした裏事情が潜んでいたのかもしれない。
7月11日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第66回では、ヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)が勤めるイタリア料理店の「アッラ・フォンターナ」に、一組の父娘が訪れる場面が描かれた。その父親が口にした再婚話を巡って、視聴者の考察が盛り上がっていたようだ。
フォンターナを訪れたのは、娘の誕生日を毎年ここで祝っている西郷久雄(高木渉)とめぐみ(新井美羽)の父娘。かつては母親との3人で訪れていたが、母親が病気で亡くなった後は二人で訪れ続けているという。
暢子手作りのバースデーケーキが運ばれ、暢子や大城房子オーナー(原田美枝子)らが一緒にハッピーバースデーを歌ってお祝い。めぐみは満面の笑みを浮かべていた。だがここで事件は起こったのであった。
「父親の久雄は思いつめた表情で『めぐみ、今日はお前に大事な相談がある』と切り出しました。するとめぐみは『私のお母さんはお母さんだけだから!』と叫んで立ち上がり、店を出て行ったのです。父親の再婚話など、年ごろの娘としては受け入れられるはずもありません。しかもその場所が母親と毎年訪れていた思い出のレストランとなれば、父親の無神経ぶりは責められて当然ですね」(テレビ誌ライター)
父親の再婚を巡る娘の葛藤は、ドラマでは定番のエピソード。この話題が今後、ストーリーにどんな影響を与えるのかは不明ながら、この場面を巡って一部の視聴者はたいそう盛り上がっていたというのである。
「朝ドラでは主要な登場人物の再婚は珍しくないものの、今回に関しては《またか》と思った人も少なくなかったはず。というのも本作の脚本を担当する羽原大介氏は2014年度後期の『マッサン』も手掛けていますが、そちらにも再婚のエピソードが登場していましたからね。同作で主人公夫妻が住んでいた野々村家の主・茂(神尾佑)は先妻に先立たれ、女中だった由紀子(愛原実花)と再婚。最初は長女から距離を置かれていたものの、由紀子の誕生日パーティーで長女が『お母さん』と呼びかけ、関係を修復するというくだりでした」(前出・テレビ誌ライター)
このように「マッサン」でも「ちむどんどん」でも、父親の再婚話において誕生日が大きな役割を果たしていた。今回はその誕生日に娘が店を出ていったわけだが、果たして父娘の和解は有り得るのだろうか。
そしてもう一つ、その再婚話に関して視聴者が考察を巡らせているのが、父親の久雄を演じている高木に関わることだという。
声優として活躍する高木は、人気アニメ「名探偵コナン」にて同姓同名の高木渉刑事、ならびに主人公コナンの仲間である小嶋元太の一人二役を演じている。その高木刑事を巡って「名探偵コナン」のファンが、お相手がどんな人かを考察しているというのだ。
「原作マンガでの高木刑事は、同僚の佐藤美和子刑事と交際中。4月公開の劇場版最新作『ハロウィンの花嫁』ではなんと、二人が結婚式を挙げているのです。実際にどうなったのかはネタバレになるので伏せますが、そのいきさつを知るコナン好きのあいだからは、今回の『ちむどんどん』に関して《父親の再婚相手は佐藤刑事だろ》との声が出ることに。また娘が激昂したのは、父親が二次元と三次元を混同しているからだとのツッコミも入っていました」(前出・テレビ誌ライター)
もちろん「名探偵コナン」の高木刑事は未婚なので、父親の久雄とは違って再婚することは有り得ない。だが高木刑事の声で声優の高木が結婚を口にすれば、ファンとしてはどうしても「名探偵コナン」を想像しないわけにはいかないということだろう。
NHKが民放アニメの話題を取り上げるのは珍しいが、アニメ版の「名探偵コナン」を放送する日本テレビ(制作は読売テレビ)は民放のなかでは最もNHKとの関係が深く、2013年には「NHK×日テレ60番勝負」というコラボ番組を制作、放送したこともある間柄だ。
さすがに今回は作中で「名探偵コナン」という固有名詞を使うことはなかったものの、視聴者のほうが父娘のやり取りから「名探偵コナン」を想像したのであれば、制作側の狙いは成功していたのかもしれない。