【ちむどんどん】「暢子、よく言った!」智のプロポーズで視聴者が共感できたセリフとは

 そのひと言には、共感できる視聴者も少なくなかったようだ。

 7月14日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第69話では、沖縄角力大会に優勝した砂川智が、幼馴染でヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)にプロポーズする場面が描かれた。

 沖縄に住んでいた時から4歳年下の暢子に惚れており、昭和47年(1972年)に暢子が料理人を目指して上京した際には、後を追うように自分も沖縄を出ていた智。もともと食品卸の仕事で成功したいとの夢をもっており、上京後は食品卸会社に住み込みで働きながら、独立に向けての資金と実力を蓄えていた。

 昭和53年(1978年)を迎え、ついに自分の店であるスナガワフードを立ち上げた智。会社が軌道に乗ったら暢子と結婚するとの誓いを立て、今回の角力大会では優勝したらプロポーズをすると心に決めていた。トーナメント制の大会では途中で足を痛めるも、決勝戦では暢子の兄・賢秀(竜星涼)に快勝し、念願の優勝を果たしたのである。

 大会終了後、堤防の先に暢子を連れ出し、夕陽をバックに二人きりのシチュエーションを作った智。プロポーズされることを事前に知っていた暢子だが、彼女の気持ちは新聞記者の青柳和彦(宮沢氷魚)に向いており、智はあくまで仲良しの幼馴染に過ぎない。何か言いたげな智を避けるように「言い忘れてたけど3連覇おめでとう! 今日はとことん飲めるね」と取り繕う暢子だったが…。

「やおら暢子を抱きしめ、絞り出すように『結婚しよう』とプロポーズした智。しかし暢子の表情は戸惑いの色を見せたままです。『必ず幸せにする』という智でしたが、暢子は『友情だと思う。智がうちに感じているのは愛情じゃなくて友情』と反論。智は暢子のために上京したと強調しましたが、それが自分勝手な言い分であることは明らかでした」(テレビ誌ライター)

 暢子は、二人が結婚しても上手くいくわけないと言い訳するも、智は「だったら俺が我慢する!」と必死だ。いつもなんでも暢子に合わせると主張する智の目線はどこまでもまっすぐで、その姿には智の主張には賛同できなくても<演技うまいな>と感心する声が視聴者からもあがっていた。

意を決してプロポーズした智。その主張には賛同できなくても、迫真に迫った演技に視聴者は感心していたようだ。©NHK

 和彦のことが好きなのか問われ、「うちは料理に集中したい」と答える暢子。「自分のお店を持つという夢もある」と語る言葉にウソはないはずだ。だが智と和彦の両方に対して思わせぶりな態度を取ってきた経緯もあり、視聴者としても智のプロポーズに困る暢子にはなんとも同情しがたいところだろう。

 同様に、自分勝手な理屈で暢子に結婚を迫る智のことも応援はできないところ。なんとも後味の悪いプロポーズシーンとなっていたが、そのなかで一カ所だけ、視聴者が快哉を叫んだセリフがあったという。

 自分の店を持ちたい暢子に対し、智は「俺が叶えてやる、暢子の夢を!」と激白。「がんがん働いて、ばっちり稼いで、暢子に店を持たせてやる!」と宣言してみせた。すると暢子は突然、強い調子で「そういうことじゃないさ!」と反発。「うちの夢はうちが自分の力で叶えんと!」と、実に真っ当な反論を智にぶつけたのである。

「智の発言は結局、暢子を嫁として自分の支配下に置きたいという、家父長制に縛られた長男の発想に過ぎません。その姿はまるで、お気に入りの女性に店を持たせてやるという成金男性さながらです。そんな智に真正面から反発してみせた暢子には、これまで彼女のことを自分勝手すぎると批判してきた視聴者も《暢子の言う通り!》《智は女を下に見ている》といった声を送ることに。この場面での暢子には“自立した女性”の矜持が表れていました」(前出・テレビ誌ライター)

 それでも「俺が、暢子を、幸せにしてみせる!」と見当違いの言葉を続ける智を、暢子はまさに醒めきった目で見ていた。その視線の冷たさは、暢子の気持ちを存分に表していたと言えるのではないだろうか。