【ちむどんどん】身辺調査でも解明できず?「和彦と暢子は同じ屋根の下」という不都合な真実

 最も基本的な情報になぜ触れないのか。その不自然さが気になった視聴者も少なくなかったようだ。

 7月26日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第77回は、結婚の報告で実家を訪れた青柳和彦(宮沢氷魚)とヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)が、母親の青柳重子(鈴木保奈美)から「結婚は、許しません」と言い放たれる場面から始まった。その回で、なぜか触れられることのない情報があったという。

 旧盆の翌日にあたる昭和53年8月19日に結婚の約束を交わし、沖縄から重子に電話していた和彦。その電話では暢子のフルネームを訊かれ、次の日曜日(実際には8月27日)に実家を訪れることとなった。

 そして迎えた実家訪問の日。息子の和彦に「あなたは騙されている!」と迫る重子は、暢子の家族構成や財政状況など比嘉家の個人情報について指摘。現在も金融機関に借金があることや、長女の良子(川口春奈)が夫と別居していたこと、そして良子のみが短大を卒業したほかは誰も大学に進学していないことなどを調べ上げていたのである。

「重子が暢子の身辺調査をしたのは、和彦の結婚相手が青柳家にふさわしい家庭の娘かどうかを知るためでした。青柳家は代々、大学教授や文筆家も多い学者肌の家柄。そして重子の実家は明治以来の実業家で、父親は銀行の重役。家政婦がいるのが当たり前という家庭に育った重子にしてみれば、比嘉家を『家の格が釣り合いません』と切り捨てたのも当然のことでしょう」(テレビ誌ライター)

 その身辺調査では暢子の母親・優子(仲間由紀恵)が働いている村の共同売店を「スーパーマーケット」と表現したり、養豚場で働いている兄の賢秀(竜星涼)について「千葉の牧場で牛飼いの仕事」と指摘するなど、微妙に調査力不足が露呈していた点は否めない。

 しかもその身辺調査では、誰でも簡単に調べられるはずの超基本的な情報が、なぜかスルーされていたというのである。

「和彦は6年前に実家を出て、沖縄文化の研究を目的に、横浜・鶴見のリトルオキナワにある沖縄料理店の『あまゆ』に下宿しています。そこはやはり6年前に上京した暢子が住んでいるのと同じ場所。二人は別々の部屋であるものの、同じ屋根の下に6年も一緒に住み続けている関係なのです。しかし今回の身辺調査ではその点について触れることはありませんでした」(前出・テレビ誌ライター)

二人がキス寸前になったのも、同じ下宿に住んでいたからだろう。トップ画像ともに©NHK

 和彦と暢子はしょっちゅう、あまゆで一緒に食事を摂っており、普段からお互いに「ただいま」「お帰りなさい」と言い合う間柄だ。端から見れば同棲しているのも同然の状況であり、とくに母親にとってはそう見えて当然だろう。

 それなら身辺調査でも「隣の部屋に住んでいる」との指摘はあってしかるべき。しかも結婚に反対するなら「今すぐその下宿を引き払いなさい」くらいの文句も付けたくなるところだ。それがなぜ、下宿について一切触れないのか。そこには朝ドラゆえの「タブー」があるのだという。

「7月22日放送の第75回では和彦と暢子が、朝ドラでは3作品ぶりとなるキスシーンを繰り広げました。とはいえ夜のドラマとは異なり、艶っぽいシーンをできるだけ避けるのが朝ドラのお約束。同棲しているのも同然の和彦と暢子が、お互いの身体を求めて部屋を行き来するといった描写はご法度です。それもあって和彦の部屋はこれまで一度たりも作中には登場していません。彼の部屋を描いてしまったら、結婚まで約束した男女がお互いの部屋を行き来する描写を避けるのが難しくなってしまいますからね」(前出・テレビ誌ライター)

 同様に、二人が同じ下宿に住んでいることを言語化してしまうと、母親の重子としてはそこを責めないわけにはいかなくなる。そうなると婚前交渉を心配せざるを得なくなり、朝ドラとしてはあまりに話が生々しくなってしまうのだろう。

 それゆえ和彦の部屋を描写することや、二人の“半同棲”について触れることは、本作におけるタブーとなっている。そもそも和彦があまゆに下宿していること自体に無理があるわけだが、そこはなんとかならなかったのか。制作陣に詰めの甘さが指摘されるのも無理もないところだ。