【ちむどんどん】暢子の押し付け弁当&大皿料理に「和彦ママが可哀想」の大合唱!

 視聴者が誰も「美味しそう」と思わないドラマなど、前代未聞かもしれない。

 7月27日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第78回では、ヒロインで沖縄出身の比嘉暢子(黒島結菜)が、婚約者の母親に向けて毎日お弁当を作る姿が描かれた。

 新聞記者の青柳和彦(宮沢氷魚)と結婚を約束した暢子。だが和彦の実家に母親の重子(鈴木保奈美)を訪ねるも、「結婚は、許しません」とにべもない対応だ。それでも「絶対に諦めない」と心に誓う暢子は、子供のころから得意にしている料理の腕を活かし、重子に毎日お弁当を届けることにしたのである。

 訪問の翌日、さっそく最初のお弁当を届けた暢子。「彩り野菜と鰤の照り焼き弁当」にはゴーヤや人参しりしりが添えられており、さっそく沖縄色が全開だ。そのわりには沖縄ではほとんど獲れないブリの照り焼きを入れていた理由は謎だが、東京の味に寄せたのだろうか。

 だがお弁当を受け取った家政婦の波子(円城寺あや)によると、重子は毎朝、決まった店にて一人で朝食を摂っているという。受け取りを拒む波子と渡す、もらえないのやり取りを何度か続けたのち、無理やり押し付けることに成功した暢子は、ルンルンとステップしながら出勤の途に就いたのだった。

「この場面でほとんどの視聴者は、相手の都合を顧みることなく『毎朝お弁当を作って届けることにした』という自分の気持ちだけに忠実な暢子の身勝手さに呆れていました。波子はある日、重子がお弁当に手を付けないことから自分が毎日二人分を食べていることを伝えましたが、暢子からは波子のことを気遣う様子が一切見られません。これはさすがに、どこまでヒロインのことを身勝手に描くのかと驚きましたね」(女性誌ライター)

 そんな暢子は次の日曜日、和彦と相談の上で、重子を横浜・鶴見に招待。自分たちが下宿している沖縄料理店の「あまゆ」にて、大量の沖縄料理を重子に食べてもらうつもりだという。だがそんな暢子の考えに、視聴者からは「重子が可哀想」との大合唱が沸き起こっているというのである。

実家を訪問したのち、暢子はお弁当や料理で重子をもてなすと決めていた。トップ画像ともに©NHK

 暢子が手によりをかけて作ったのはラフテー(豚三枚肉の角煮)、てびち(豚足の煮つけ)、クーブイリチー(昆布と豚バラの炒め物)、シブインブシー(冬瓜の味噌煮)といった典型的な沖縄料理ばかり。ほかにも沖縄風天ぷらや人参しりしりも大皿にてんこ盛りだ。

 あまゆの娘・金城トミ(しるさ)は「これなら絶対喜んでくれる」と太鼓判。暢子の後見人的な存在でもある沖縄県人会会長の平良三郎(片岡鶴太郎)も満足そうに微笑んでいた。そんな“おもてなし”の場面を、視聴者はどう見ていたのだろうか?

「数々の料理が並ぶ場面では通常、視聴者から《美味しそう!》《私も食べたい》といった声があがるもの。実際、前作の『カムカムエヴリバディ』では秘伝のあんこや回転焼きに対してそういった声が続出していたものです。ところが今回、暢子が作った数々の料理にそういったポジティブな反応は一切なく、むしろ《肉やてんぷらばかりで重子さんには重すぎるでしょ》《さすがに豚足は気持ち悪がられるのでは》といった声があがる始末。そもそも相手の都合は一切無視し、『食べてもらえれば分かってもらえる』という自分の気持ちだけを押し付ける暢子に、視聴者は辟易していたというのが実情です」(前出・女性誌ライター)

 どうにもヒロインに肩入れする声が聞こえてこない今週の「重子ママ攻略」だが、その陰には制作陣に対する批判が渦巻いているようだ。

「おそらく制作陣は、《意地悪な重子ママと、虐げられている嫁候補の暢子》という対立軸を設定したうえで、暢子がけなげにお弁当やご馳走を振る舞うことで、重子ママの心が動くという筋書きにしたいのでしょう。しかし視聴者の目に映るのは、重子ママの都合などお構いなしで自分の気持ちだけを押し付ける暢子の身勝手ばかり。そういったすれ違いが生じるのも結局のところ、昭和世代のオジサンたちだけで物語を作っているところに根本的な原因が潜んでいるのではないでしょうか」(前出・女性誌ライター)

 そもそも電車の乗り方さえ分からない箱入り娘の重子であれば、あまゆのような大衆居酒屋には生理的な嫌悪感を抱きがちなもの。「こんな不潔なところで食事なんてできない」というのは、それこそ昭和のお嬢様には珍しくなかった話だ。

 しかし居酒屋大好きな制作陣は、美味しい料理さえ用意すれば、人の心を動かせるとでも思っているのだろうか。それこそ暢子と和彦が拒否している「価値観の押し付け」にほかならないのだが…。