【ユニコーンに乗って】永野芽郁を爆死から救う“中年新入社員”西島秀俊の存在感!

 どうやら黒歴史となる恐れは、回避できていたようだ。

 7月26日にドラマ「ユニコーンに乗って」(TBS系)の第4話が放送され、平均世帯視聴率が8.2%になったことが分かった。前週から0.4ポイント上昇し、2週続けての下落から少しだけだが数字を回復した形だ。

 本作は永野芽郁が演じる若手CEOの成川佐奈を中心に、若きエドテック企業の奮闘を描く物語。スタートアップ企業の「ドリームポニー」が資金調達の困難を乗り越えようとする姿や、一緒に同社を立ち上げた須崎功(杉野遥亮)と佐奈を巡る恋模様などが見どころとなっている。

 だが今回も、今どきのスタートアップ企業を描いているとは思えないディテールの欠如が、本作に影を落としていた。たとえばCEOの佐奈をはじめとするわずか6人のメンバーで、数十万人規模のユーザーを持つ教育アプリの会社が運営されているという現実感のなさは、相変わらずだったのである。

「あと10カ月で資金がショートするという苦境のなか、アプリに課金制を導入するかどうかの大事な経営判断を、学級会さながらの話し合いで検討。需要予測や収益予測、AU(アクティブユーザー数)といった指標が一つも示されないのですから、これではいくらファンド会社に資金提供を求めても、相手にされないのは無理もありません」(IT系ライター)

 佐奈に資金提供を持ちかけつつ、夜の食事へと執拗に誘う「GFファンド」CEOの高山(飯田基祐)も、IT業界の現実に即していない姿で描かれていた。

 ウィキペディアに名前が載るような投資家にもかかわらず「投資可能金額は5000万~1億ともいわれている」という規模の小ささは噴飯もの。しかも女性CEOを酒のつまみ程度に扱う姿は、令和の著名投資家にはあるまじき振る舞いだ。そんなことをすれば横のつながりが強いIT業界の中で、あっという間に悪評が広がるのは火を見るよりも明らかだろう。

 そんな頼りない舞台設定のなか、なんとかドラマとして成立しているのはひとえに、永野の演技力や存在感があってこそ。そしてなにより永野の奮闘を支えているのが、元銀行員の中年新入社員・小鳥智志こと、西島秀俊の存在だというのである。

「最初は『ドリームポニー』のスタッフたちと同様に、視聴者のほうにも元銀行支店長の小鳥が中途入社してくる姿には違和感がありありでした。ところが回を重ねるにつれ、大人ならではの知見が経営にも活かされるようになり、さらには佐奈や功ら人生経験の浅い若者たちを密かにバックアップする姿は、企業内教育におけるメンター的な役割も果たすことに。ITの知識は豊富でも会社経営のイロハや社会人としての常識を知らない佐奈たちを小鳥が導いていくことで、物語に一本の縦筋を通しているのです」(テレビ誌ライター)

陰に陽に佐奈を支える小鳥。若者たちからITの知識を教えられる陰で、若者たちも小鳥から学んでいる。トップ画像ともに©TBS

 この回ではファンド経営者・高山との食事会で執拗に酒を勧められ、二次会に付き合うよう無理強いされる佐奈を、すんでのところで小鳥が助ける場面があった。

 小鳥は相手にパンチを食らわそうとする佐奈を止め、高山を送迎車に押し込んだところで「出してください」と指示。すると運転手は素直に「はい」と応じて、走り去ったのだった。

 視聴者の一部には、運転手がなぜ部外者である小鳥の指示に従ったのかを疑問に思った向きもあるだろう。ただ同様のシチュエーションは、会社の酒席ではザラにあること。小鳥のようにいかにも立場のありそうな人物に指示されると、素直に従う運転手は少なくないのである。

「ここで功が先に佐奈を止めていたら、若造に邪魔されたと憤慨する高山と揉めていたことは確実。この場面こそ、佐奈があえて小鳥を採用した意味を如実に示しており、さらに言えば西島秀俊の存在が主演の永野芽郁を救っていることを表していたように思えます」(前出・テレビ誌ライター)

 いまやアカデミー賞俳優の西島が、29歳も年下である永野の主演ドラマを脇役として支えるのはなかなか異例の座組だ。そんな役割を受け入れた西島の存在こそが、「ユニコーンに乗って」を爆死から救っていると実感させられた第4話だったのではないだろうか。